対談 1 国際バカロレア200校で見えた「日本の教育課題」

国際バカロレア200校計画で見えてきた「日本の教育課題」


ieNEXT編集部は、国際バカロレアが果たしてきた意義と今後について国際バカロレア大使で東京インターナショナルスクール理事長 坪谷・ニュウエル・郁子氏とアオバジャパン ・インターナショナルスクール理事でムサシインターナショナルスクール・トウキョウ理事長の宇野令一郎氏に対談をお願いしました。


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2.「国際バカロレアで見えてきた小学校の英語教育」は、こちらをご覧ください
3.「国際バカロレアで見えてきた英語の時間と『質』」は、こちらをご覧ください。
4.「国際バカロレアで見えてきた大学の国際化と『質』」は、こちらをご覧ください。

Youtubeでも公開予定の本対談。 写真右)国際バカロレア大使で東京インターナショナルスクール理事長 坪谷・ニュウエル・郁子氏 写真左)アオバジャパン ・インターナショナルスクール理事でリトルエンジェルス インターナショナルスクール理事長の宇野令一郎氏

その対談から浮かび上がってきたのは、インターナショナルスクールだけではなく、現在の日本が抱える教育課題でした。

編集部:ムサシインターナショナルスクール・トウキョウ理事長で、アオバジャパンインターナショナルスクール理事の宇野先生よろしくお願いいたします。国際バカロレア大使で、東京インターナショナルスクール理事長の坪谷ニュウェル郁子先生よろしくお願いいたします。

クラスの定員が多い日本

坪谷:よろしくお願いします。

宇野:坪谷先生は、国際バカロレアのオピニオンリーダーであり、東京インターナショナルスクールの創立者でお聞きしたいことが多くありました。
よろしくお願いします。

国際バカロレアで分かった少人数制の意味

宇野:政府は、これまで公立小学校のクラスの上限人数を、40人から今後35人に減らしていくという発表がありました。

アオバジャパン ・インターナショナルスクール理事でリトルエンジェルス インターナショナルスクール理事長の宇野令一郎氏

今後5年間の措置で、徐々に35人にしてと思うのですが、以前から坪谷先生は、40人学級に問題意識を持っていらっしゃいました。

まず最初に先生のご感想をお聞かせください。

義務教育標準法は、小学校においては、一学級の児童又は生徒の数を40人を標準とするとしている。(小学1年生のみ35人) 引用:e-Gov法令検索、参考:https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00121.html

坪谷:まず前提として、1学級に何人まで生徒がいていいのか、ということが重要です。

日本の学級規模の40人は、世界の国々のなかでも最大規模です。

最大規模というのは、他にはイスラエルと中国がありますが、OECDの加盟国は平均が23~24人です。
40人いるのは、日本だけです。

OECDの加盟国の平均値というのは理想ですが、多いイギリスやドイツが30人ですので、それぐらいまでにもっていかないといけない。

多様な生徒を1名の先生が学級として運営している。

なぜ学級定員を減らすべきなのか?

なぜかというと、今の日本の40人学級の多様な生徒構成にあります。
15%の生徒がついていかれない、つまり落ちこぼれ。
13%の生徒は吹きこぼれっていうんですけれども、学校に行っても既に知っている知識を教えるだけだから、つまんないよと感じていることがある。
さらに2.5%の生徒が発達障害です。

さらにまた、ここのところ日本語をあまり解さない外国人の児童が増えている

そんな中、1人の先生が40人を教える。
それが現実なんです。

国際バカロレア機構の責任者も驚いた「40人学級」

私は国際バカロレアの導入を始めた時に、国際バカロレア機構の責任者と一緒に日本の教育委員会をいろいろまわりました。

▽ 国際バカロレア機構の公式インスタグラムで紹介される星出彰彦宇宙飛行士も国際バカロレアで学んだひとり。


坪谷:その際に教育委員会の方に「国際バカロレアって学級規模が25人だけなんですか?」とよく聞かれました。

国際バカロレアの責任者は「だいたい25人ですよ」と答えていたんですよ。

何度も同じ質問をされるので、国際バカロレアの責任者が「なぜ日本の教育委員会は、国際バカロレアの1学級25人について、何度も同じ質問をするのですか」と私に訊ねました。

私が「日本では、1学級が40人なんだ」と言ったら驚いていました。

国際バカロレア機構の責任者は、40人学級で「40人の生徒は、経済的、社会的、文化的バックグラウンド、なおかつ学力の面も均一の生徒が集まっているのか?」と聞いてきました。

私は、そうではなくバラバラです、と答えたところ「誰がそんな40人も教えられるんだ!」とびっくりされました。

だから基本的に40人学級というのは、1人の教師が到底教えるには不可能に近いということです。

これを我々は認識していかなくてはいけない。

予算の壁

坪谷:そのなかで、文科省が英断をして、義務教育の課程、小中学校においては30人学級ということを打ち出したんですが、やはり財務省の壁が大きかった。

財務省は、各省庁からの膨大な予算案をいかに按分するか。有効活用のため削るのが仕事のひとつ。教育予算の壁は、保護者が声を上げないと増えることはない。

坪谷:皆さん、よく文科省を批判しますけど、文科省は一生懸命やるんですが、結局はそこで予算がつかなければできない。
予算の壁にぶつかってしまう。

今回もそうです。

したがって、小学校、中学校30人ということで話をしてきましたが、最終的には中学校は今まで通り。

小学校は、1年生は35人で2021年からは小学校2年生からは35人と段階的に小学校を5年間かけて35人にしていく。

文科省としては、その35人の生徒が中学1年に上がる時に、中学生を35人にしようという計画ではないか、と考えています。
ただ中学校で、1学級 35人は、かなり多いかなと思っています。

GIGAスクールが前倒しになり、個別学習に向けてハード面で準備が進む。

坪谷:教育予算の問題で話を進めると、予算を配分する財務省は、「1学級の人数が減ったため学力が上がった」根拠や証明を出して欲しいという議論になります。

アメリカの例で、「人数が減ったからといって学力が上がらなかった」という証拠が出されたこともあるのですが、よく見るとと23人を18人の例でした。

それだったら、私が言いたいのは、「まず23人にして欲しい」ですね。

たとえば秋田県、1学級の人数を減らし学力が上がって、なおかつ生徒の非認知能力が上がったという結果もある。*2

坪谷:もう一つは、この40人学級だと、物理的に先生が前で話している内容が後ろの席の子に聞こえない

先生の話が聞こえなければ、授業が成り立ちません。ですから、1学級の定員をもっと少なくして欲しい。

すなわち、私たちの税金は未来のために使ってもらいたい。
未来とは何か?となると未来は子どもたちであり、そして子どもたちを変える力があるのは教育です。

私たちは「そこに私たちの税金を使ってもらいたい」ともっと声をあげていかなくてはいけない。

生徒40人に先生1人で探究的な学びが実施できるのか?

坪谷:ちょうどアクティブラーニング*1をしようと先生たちも努力されているタイミングです。
しかし、40人に近い学級でそこにアクティブラーニングという対話を通じた学びも入れようとすると、先生1人に生徒40人だと多すぎると授業参観で感じました。

宇野:従来の一方通行の授業をするならば、40名でも30名でも先生は、話すだけですから、そんなに変わらないと思うのですが。

その中で2020年度の学習指導要領の改定で、より対話を通じた学び、アクティブな学びに広がりを見せようとしています。

そのためにも今回の学級規模40人から35人にしたのは、最初の1歩だと考えています。

探究型、アクティブラーニングの学び方と、生徒が大人数で先生1人というのは、相性は良くないですよね。

坪谷:そうですね。
講義型の授業として例えば、保護者の方に学生時代に大きい講堂で200人で受けた講義とゼミで15人くらいで受けた時、自分が「どちらの方が学びになっていたのか」を考えると全然違いますからね。

坪谷:では、先生1人と生徒1人がいいのかというと、それだけでもない。

ある程度の人数がいて、そこの中で切磋琢磨しながら、いろんなことを話し合いしながら、その中で仲良くなったり、言い争いをしたり、そういう社会性を身につけながら育っていくというところです。

ただ私は、小学校、中学校は特に手厚く育てていかなければと、特に思うところです。

義務教育の間は、もっとひとりひとりの生徒に向き合って今より少人数でやっていくべきだと思っています。

対談 2 国際バカロレア 坪谷ニュウエル × アオバ宇野「国際バカロレア200校で見えた〜小学校の英語教育」はこちらです。

https://edujump.net/internationaleducation/1320/

取材:北岡優希、村田学

参考文献:
*1 アクディブラーニング「主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し解を見いだしていく能動的学習」中央教育審議会答申(平成26年12月22日)

*2 鈴木 款著 FNN プライムオンライン「学力全国トップの秋田県は19年前から少人数学級を導入 伸びたのは学力だけではなかった」

eduJUMP! 編集部
eduJUMP!は、子どもたちが世界のどこでも誰とでも、共に生きていき、夢を実現できるような教育を紹介するメディアとして設立されました。保護者・子ども自身・教育関係者の3者を対象に、子どもたちの未来を拓くために有用と思える情報を、当ウェブメディアやイベントを通じて提供します。
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