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【対談】保護者から見た「英国ボーディングスクールのリアルライフ」②

英国ボーディングスクールでのリアルライフを保護者の視点でお伝えするこの対談。自身のお子さんをイギリスのボーディングスクールに送り、イギリスのボーディングスクールに留学する生徒の教育ガーディアンを担う英国企業「ピッパズ・ガーディアンズ」の日本代表を務める黒田よりこさんと、今夏、長子が現地の高校を卒業したeduJUMP!ライター・knockoutが、赤裸々に語ります。第2回目となる今回は、入学するタイミングによって学習や生活はどのように異なるかをテーマに、英語力や課外活動、受験などについてお届けします。

【連載リンク】
第1回 ボーディングスクールの理想と現実
第3回 近日公開予定


Yoriko KURODA黒田 よりこさん
1974年生まれ。新卒で婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に就職し、女性誌の編集に携わる。家庭の都合で中東とイギリスに滞在し、国際的な教育に触れたことを契機に教育の記事を国内メディアに寄稿。帰国後Go Beyondを立ち上げ、国内外企業のブランド・マーケティングを支援。イギリスで学ぶ小中高の留学生のサポートを行う英系企業ピッパズ・ガーディアンズの日本代表も務め、現地からの最新情報をもとにイギリスのボーディングスクール留学の情報発信に努めている。

knockout

eduJUMP!ライター knockout
40代・三児の父。主夫として子育て・教育に関わる。地元自治体の教育および福祉分野の審議会委員やPTA活動を通じて教育改革・教育行政に関心を持つ。長子の留学をきっかけに海外の教育事情にも視野を広げ、SNSを中心に情報発信。2.4万人がフォローするX(旧Twitter)アカウントは @knockout_ 。


【第2回】学習は?生活は?入学するタイミングでの違い

校舎のまわりは一面の芝生。手入れが行き届いています(knockout提供)

メンタルと英語力が重要!~高校からのボーディング~

knockout 息子はシックスフォーム(高校)から現地の学校に進学しました。2年間のカリキュラムを修了し、A‐levelの最終試験を経て、なんとか希望する大学への進学もかなったのですが、率直にいって、この時期からの留学は難しさもあると感じました。

黒田よりこさん(以下、敬称略) 入学してすぐに大学受験に直結するA‐levelの授業がはじまるのはプレッシャーも大きかったのでないかと思います。強いメンタルが必要になりますね。

knockout 入学して約1年後には、学校から卒業時の予測スコアが提示され、そのスコアを基に大学に出願することになります。希望の大学からオファーを得るためには、短期間でイギリス式の授業に慣れ、合格基準を満たす予測スコアを取らなければなりません。焦りとストレスに苛まれているのではないかと心配していました。

黒田 日本とイギリスの学び方の違いももちろんありますが、それを裏付ける英語力も必要ですよね。A‐levelはGCSE(※イギリスの中学生が義務教育修了の認定を受ける全国統一試験。コースは14~16歳の2年間)で英語をパスしていることが前提のカリキュラムですから、英語力がある程度ないと授業についていくのにも一苦労だと思います。

knockout 息子は渡英直前に英語力判定のための簡易的な試験を受けたのですが、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠 ※図1)に当てはめるとB1に近いB2でした。英語力が十分でなかったこともあり、入学後しばらくは思うように成績が取れない科目もありました。概念の理解はしているのに、英語でのアウトプットがおぼつかなくて評価してもらえない。すごく悔しかったのではないかと想像します。

一般的には、どのレベルの英語力があることが望ましいのでしょう?

文部科学省HPより転載

黒田 高校からですと、CEFRのC1直前くらいの英語力はあったほうが、入学後、負担が少ないですよね。日本で学ぶ英語とイギリスで必要とされる英語には質的な違いも感じています。そのギャップに慣れるのが最も大変なところかもしれません。

教科によっては授業のなかでアウトプットが求められる場面も多くあると聞いています。ディスカッション形式で進む授業も少なくありません。英語でのアウトプットがしっかりできないとストレスかもしれませんね。

knockout 長男は大学では理系分野に進むことを入学の段階から決めていたので、A ‐level では数学、上級数学、物理、化学と理系科目だけを選択しました。だからこそ、多少英語がおぼつかなくてもなんとかなった面もあったのではないかと想像します。もし文系科目を選択していたら、もっと苦労していたかもしれませんね。

じっくりと英国式精神を養う~小・中学校からのボーディング~

knockout 最近はSNSでもバイリンガル教育の話題でもちきりです。黒田さんのお子さんはプレップスクール(小学校)の途中からイギリスの学校に入られましたが、たとえば、小学校や中学校から入った場合、英語力は文系科目の学習に十分耐えるレベルに到達するのでしょうか?

黒田 息子の場合ですが、早くから留学していたぶん英語力は鍛えられましたね。イギリスの英語教育の真髄は書くことの徹底にあると感じます。単なる英語力だけでなく、イギリス的な物事の考え方にもある程度慣れることができ、それがライティングに活かされていると感じます。ライティングは慣れるのにとても時間がかかります。極端なことを言うと、日本語で考えた論理構成のまま英語でライティングするとイギリスでは評価してもらえないようです。

knockout イギリスの学校が求めている英語の能力やその水準は本当に高いと聞きます。ボーディングスクールでは小学校の高学年くらいからチャールズ・ディケンズ、シェイクスピアなどの作品に取り組み、さらには日本の古典にあたるラテン語も勉強するのだとか。それらに関してエッセイが書けるレベルにまでライティング力を鍛え上げるのですよね。

黒田 イギリスのボーディングスクールでは中学受験がある学校も多いため、私立中学受験の対策として徹底して詩や古典文学を学びます。言語の奥深くにある歴史や文化まで精通していないと、これらに太刀打ちできないようです。ローマ史やギリシャ史まで遡った知識とセットになっており、学校もこれらを深く学ぶよう生徒に促します。

knockout そのレベルの英語を現地の生徒と一緒に学びつつ、日本語力も維持向上させるのは並大抵のことではありませんね……。英語と日本語、両方の言語がバランスよく高まるものなのでしょうか?

黒田 GCSE の科目で日本語を選択し、日本語の本を多く読む子なので「話す」「読む」「聞く」については問題はないのですが、日本語を「書く」だけはなかなか年齢相応に追いつかないです。

以前息子に、英語4技能と日本語4技能について、自分がどれくらいできると思うのかをすべて10点満点で自己評価してもらいました。英語・日本語ともに、ほぼどの技能も10点でしたが、日本語の「書く」だけは6点だと言っていました。そういう意味では、本人は“完全なバイリンガル”だと自覚はしていないんですよね。言語は得意、不得意の出る能力でもあるので一概には言えませんが、一口に留学を通したバイリンガル教育といっても、実現するのは決して容易ではないと感じます。

knockout ちなみに、もしイギリスの中学校から留学開始することを考えると、Year9の学年からになりますね。日本でいうと何年生のどの時期になるのでしょうか。

黒田 生まれ月によって違います。イギリスでは9月が新年度の始まりなので、9月~3月生まれの場合は日本の中学2年の9月、4月~8月生まれの場合は中学1年の9月からが入学のタイミングとなります。

多様な課外活動とイギリスの受験システム

knockout イギリスの義務教育は中学校を卒業するYear11(16歳)までであり、高校の2年間は「大学準備課程」とも言われます。その名の通り勉学中心の生活ですが、そんな生活のなかでも、併設の中学校からそのまま進学した現地の高校生たちは、スポーツや音楽やドラマなど多様な体験を継続していると学校からのニュースレターを読んで感心しました。

黒田 イギリスの中学校では体験や経験をとても重視します。勉強も大事ですが、それと同じぐらい課外活動が活発で、感覚的には半々のウェイトです。各種スポーツもあれば、文化系の音楽やアート、学術関係の活動、その他にも地元と密接したチャリティ活動、学校内のボランティア活動など多種多様です。学校にもよりますが180ほどの課外活動を用意している学校もあります。生徒たちは課外活動をひとつに絞る必要がなく、興味あるものを複数選ぶことができます。

knockout 日本の、特に都会の進学校では、どうしても勉強8割、部活2割といったウェイトになるのが一般的だと思いますが、半々とは驚きました。イギリスでは学業と課外活動を両立して頑張ることを学校として推奨しているんですね。

黒田 その背景には、イギリスの中学受験のシステムも大きく関係していると思うのです。

息子が受けた学校の中には、一泊二日で寮生活まで体験する試験を課す学校もありました。本人は楽しかったようですが、ボーディング生活や学校との相性もみられているのだろうな、と感じました。課外活動を通して、協調性や社会性を身につける。こういった点も入試で見られます。

また受験校を決める際には、校長がその子を「総合的」に見て、相性の良い学校を提案します。学力や進学先だけで学校を決めることはありません。もちろん親からもどの学校を受けたいか希望を出しますが、この学校が合うと思うからぜひ見学に行ってごらん、実際に行ってみて良かったら受けてみたら?と提案されるのです。息子が通っている現校も校長先生からのおすすめでした。世界中から生徒が集まってくるダイバーシティにあふれる環境が特徴で、親子ともとても気に入りました。

knockout イギリスには、430を超えるボーディングスクールがあるそうですね。これほど留学生に選択肢がある国は他にないと思います。スポーツ環境に優れたところ、教育水準が飛び抜けて高いところ、音楽施設が超一流のところなど、さまざまなタイプの学校があるでしょうから、子どもに合った学校の見極めが肝になっているんでしょうね。

黒田 そうですね。イギリスでは、進学に際して生徒に合う学校を探したり、受験校リストをつくったり、アドバイスするのは校長先生の役割なんです。日本からイギリスの学校に挑戦する場合は、情報も少なく、学校の選択が難しいのは、こうしたイギリスならではの事情もあるからだと思います。ですので、現地の校長の代わりとして弊社が提供しているようなスクール・アドバイスのサービスを利用したり、学校の公式ホームページを見比べたりして、正しくかつ最新の情報を入手することが重要だと思います。(第3回へ続く)

ピッパズ・ガーディアンズ代表 ベン・ヒューズ氏より

毎年9月、私たちはガーディアンシップ・サービスを通じて日本人学生を英国に迎えています。中には学校が適しておらず、悲しい思いをしたり、学力を最大限に発揮できなかったりする生徒を見かけます。このような状況をどうしても変えたいと思い、ガーディアンシップ・サービスでの知見を生かして、スクール・アドバイス・サービスを提供することとなりました。弊社のスタッフだけでなく、私自身が数多くのボーディングスクールに足を運んでいます。学校の内部のことを良く知り、深く理解した上でのアドバイスと、入学を希望する学校について多くの情報を提供することで、お子さまがより良い学校に入学することができれば、学業面での成功の可能性も高くなります。イギリスのボーディングスクール留学にご関心のあるご家庭の皆さまのお役に立てればと考えています。

ピッパズ・ガーディアンズについて
ピッパズ・ ガーディアンズは、全英約120のボーディングスクールと連携し、遠く離れた両親に 代わって学校と密に連携を取り、留学生に日常のケアとサポートを担うガーディアンサービスと 伝統的なボーディングスクール入学のためのプライベートコンサルティングを提供している英国 の企業です。アジアで実績を積み、日本でも本格的なサービスを開始。すでに慶應義塾大学附属中高一貫校やTazaki財団からの留学生をサポートしています。

 

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原稿:knockout
編集・構成:原知子

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