ホームインターナショナルスクール国際教育連載4: ゼロから分かる国際バカロレア

連載4: ゼロから分かる国際バカロレア

3.国際バカロレアPYPとMYP:IBが提供するのはフレームワーク

 

前項においてIBのプログラムとしてPYP、MYP、DP、IBCCの4つを紹介したが、ここでは主要なプログラムであるPYP、MYP、DPの3つについて紹介したい。

 

PYP(Primary Years Programme 幼稚園・小学校レベル)

 

PYPは3歳児から12歳児を対象にしたプログラムである。言語・社会・算数・芸術・理科・体育の6分野をカバーするのだが、日本のカリキュラムと大きく異なるのは「私たちは何者なのか」「私たちはどのような場所・時代にいるのか」「どうやって自己表現するのか」「世界はどう動いているのか」「私たちはどう組織しているのか」「地球の共有」という、Units of Inquiry(UOI、探究の単元)と呼ばれる6つの科目横断テーマを通じて学ぶことである。

 

さらに、これら6つのテーマは独立したそれぞれが科目として取り扱われるわけではない。数週間にわたり、教科横断プロジェクトとして時間が割かれ、テーマの1つ1つを各学年ごとにじっくり探究していく。例えば、「私たちは何者なのか」というテーマにおいては、教師は「自分で決めていくことは幸福や健康に影響を与える」といった中心課題(Central Idea)を提示し、生徒に探究させていく。

 

このように中心課題等のフレームワークはガイドラインとして提供されるものの、PYPで指導する具体的な教育の中身は、後述するDPと異なり、国際バカロレア協会(IB)から提供されるわけではなく、クラス担任や専科教員等の複数の教師が協働作業で決めていく。

 

「何をどのように学習するか」は学校のカリキュラム設計に委ねられており、学校及び教師は、生徒が理解できる身近な題材を選択し、既存の知識と新しい知識を関連付けながら、生徒が自らそして協調しながら理解を深める設計を行う必要がある。

 

科目横断型であることに加え、IBが提供するものはあくまでガイドラインであること、参照する教科書が無い(むしろ禁止)ことなどが、日本の学校関係者・保護者・教職員にとっての導入のハードルの一つとなっていることは想像に難くない。

 

これは、IBに並ぶ国際カリキュラムのもう一つの雄である、English、Math、Science、という基本科目があり、それぞれに生徒教科書・教員用ガイドが存在する一方、探究型のGlobal PerspectivesというPYPを意識した科目を別途配置する「ケンブリッジ国際」とは大きく異なる。

 

PYPに戻ると、生徒は学びのサイクルにおいて探究した内容をレポートや目に見える成果物として整理し、発表させ、Unitの最後に振り返りを行う。

 

そしてPYP課程の最後を飾るものとしてExhibitionとよばれる学内発表会が集大成として設定される。これは統一したテーマに基づき、一人またはグループで2-3か月かけてリサーチし、プレゼンするものである。

 

MYPプログラム(Middle Years Programme 中学校レベル)

 

MYPはPYPに続くもので、11歳から16歳を対象年齢としている。

 

MYPではこの後のDPの準備期間の意味も含めており、DPで重要な要素となる言語(外国語)を含む8つの教科(言語A、言語B、人文科学、理科、数学、芸術、体育、テクノロジー)を学習する。

 

またPYPと同様に、教科を超えた学際的な取り組みと実社会との関連性を重視しており、Areas of Interaction(AOI、相互作用のエリア)として「学習の方法」「コミュニティと奉仕活動」「人間の創造性」「多様な環境」「保険教育と社会性の教育」という5分野が設定されている。

 

またこれもPYPと同様で、DPと異なる点だが、各教科で扱う具体的な内容やカリキュラム体系はIBから提供されるわけではなく、学校独自で規定する(IBに新規認定申請する時点では予め用意しておく必要はある)。

 

IBが規定するのは8つの教科を実施することと、5つのエリアという最低限のフレームワークのみである。

 

この5領域はMYPが重視する教育観点として、各教科内での言及のほか、教科学際プロジェクトや教科間相互で協働設計したプロジェクトが想定されている。

 

そして生徒が知識を主体的に統合・整理し、現代社会への関心や能動的な態度を育てることを目的としている。最終学年ではPersonal Projectと呼ばれるプロジェクト学習がある。

 

IB教育における教師の役割

 

ここまでPYPとMYPについて簡単に紹介してきたが、DPについて詳述する前に、IB教育における教師の役割について2つほどまとめたい。

 

まず第1に、IB教育における教師の役割は、知識を一方通行で教える狭義のTeacherだけではなく、企業的に言うならばコーチ、ファシリテーター、メンター的な役割が極めて重要である。

課題を提示する、生徒が能動的に活動する中で参考になるデータや記事を紹介する、チームワークをサポートする、纏め方を指導するなど、多岐にわたる役割がある。

 

第2に、PYPのUOIやMYPのAOIなどの学際的な教育を提供するには、担当科目を超えた教員間の綿密なカリキュラム設計への協働作業(コラボレーション)が不可欠となる。

 

具体的には全体設計を協同で行うほか、お互いにどのようなことを教授しておりどの様な協働ができそうかなどなど、毎週定期的にコミュニケーションするようなことになる。これは自分の専門分野さえしっかり指導できれば良い、と考える教員に対しては、真逆に近いほどのパラダイムシフトであろう。

 

つまりIB教育を成立させるには、全教員がIB教育を深く理解し、積極的にかかわることが不可欠なのである。

 

逆に言えば仮に学校のトップがIB教育実施を決断したとしても、賛同教員と彼らの継続的関与がなければIB教育は成立しない。

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