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世界大学ランキングの歩き方【前編】3大ランキングを読む(2024年度版更新)

グローバルな視点に立って進学先を検討する際、多くの人々が頼りにする世界大学ランキング。毎年公開の時期になると、メディアやSNSでその結果が議論されます。同時に、多様な大学を一律の基準で順位付けすることに対する批判もまた存在します。賛否両論の中、その認知度は増してきていますが、一体全体、それぞれのランキングはどのような評価基準で大学を評価しているのでしょうか。そして、それは本当に大学の質を正確に反映していると言えるのでしょうか。本記事では、複数存在する主要な世界大学ランキング各々の特徴と、その評価方法に関して注意すべきポイントを確認していきます。

※この記事は、2023年9月27日に発表された『Times Higher Education World University Rankings(THE)2024年度版』を反映し、内容を更新しました。(2023年9月28日更新)


INDEX

▷3つの主要な世界大学ランキング

 ➀Times Higher Education World University Rankings (THE)
 ②Quacquarelli Symonds QS World University Rankings (QS)
 ③Academic Ranking of World Universities (ARWU)

▷まとめ

3つの主要な世界大学ランキング

世界大学ランキングの中でも、主要な3つのランキングをみていきましょう。

① Times Higher Education World University Rankings (THE)
THE

【調査元】The Times Higher Education(イギリスの高等教育情報誌)
【対象大学数】104の国と地域にわたる1,799の大学(最新版)
【公開時期】毎年9~10月

 

THEは、世界中の大学のパフォーマンスを評価するための評価基準として有名です。以下の5つの評価基準に基づき評価が行われています。

THEは、「研究」と「研究の質」の評価割合が全体の約60%を占めることから、研究活動に主眼を置く大学が高評価を獲得しやすいランキングになっています。結果として、教育活動に重心を置く小規模の大学は見過ごされる可能性があります。また、自然科学分野は社会科学や人文科学に比べて、より多くの論文が発表・引用されるため、この分野に強みを持つ大学が有利になるともに、多くの論文を発表する大規模な大学ほど評価が高くつきやすくなっています。

「教育」は全体の29.5%を占め、これには教育に関する評判調査、教員一人あたりの博士号取得者数、教員一人あたりの学生比率、教育機関収入、学士号取得者一人あたりの博士号取得者比率が含まれます。これらの指標は、大学が学生にどれだけ高品質な教育環境を提供しているか、あるいは教育に対する大学の総体的な取り組みを評価しています。個々の学生の経験や満足度、教育結果を直接的に反映するものではないと理解することが重要です。

さらに、THEの評価の約1/3が評判調査によるものであるため、主観的な評価が大きな役割を果たしていることも重要なポイントです。評価は必ずしも大学の教育や研究の客観的な品質だけを反映しているわけではなく、一部は大学のブランド力や認知度の影響を受けているという点に留意して解釈すべきでしょう。

② Quacquarelli Symonds QS World University Rankings (QS)
QS 

【調査元】Quacquarelli Symonds(イギリスの教育コンサルティング会社)
【対象大学数】104の国と地域にわたる1,500の大学(最新版)
【公開時期】毎年6月

 

QSもまた、世界中の大学の評価に用いられる有名な世界大学ランキングです。以下の9つの評価基準が含まれています。

QSもTHE同様、研究に重きが置かれたランキングとなっています。最大の違いは評判調査が重視されている点です。「学術的評判」と「雇用主の評判」を合わせると全体の45%が評判調査によって構成されています。大学知名度などによるバイアスを受けやすいランキングだと言えるでしょう。

教育面の評価において、QSは「教員一人あたりの学生比率」をひとつの基準にしていますが、教育の質的評価が不十分ではないかと批判を受けることがしばしばあります。この指標だけでは、大学の教育環境や教授法、学生の学びの質といった側面が反映されないからです。さらに、「雇用主の評判」と「雇用結果(=卒業生の就職率・影響力)」が全体の20%を占めています。「雇用主の評判」は昨年までのランキング指標に比べて評価のウェイトが5%増加しており、「雇用結果」は今年新たに加わった評価指標です。これらの変更から、QSは大学の社会貢献性や産業界での影響力を大学の教育力の一部として評価していることが読み取れます。大学教育が単に知識の獲得だけでなく、卒業生の職業的成功に寄与することも重要な役割であるという視点を反映していると言えるでしょう。

QSは2024年度版において「国際的な研究ネットワーク」「雇用結果」「持続可能性」の3指標を追加しました。時代に応じて適切に評価指標を変えることは柔軟性があると言えますが、反面、客観性や公平性に懸念が生じ、恣意的な順位付けとなってしまう点には注意が必要です。

③Academic Ranking of World Universities (ARWU)
ARWU 

【調査元】Shanghai Ranking Consultancy(中国の教育研究機関)
【対象大学数】2,500以上の大学(最新版)
【公開時期】毎年8月

 

ARWUは、以下の6つの指標に基づいて世界の大学を評価しています。

ARWU最大の特徴はTHEやQSでかなりの割合を占めていた評判調査がない点です。その意味では、客観的で比較的安定した評価方法であると言えます。評判調査の代わりとして、ノーベル賞やフィールズ賞を受賞した卒業生の数(=「教育の質」)や教員の数(=「教員の質」)、特定分野で多数の引用を受けている研究者数などの指標を使用しています。しかしこのアプローチには一定の限界があります。ノーベル賞やフィールズ賞の受賞には数十年の歳月がかかるため、結果的に古い歴史を持つ大学が優遇され、現在のパフォーマンスや質は必ずしも反映されません。また、これらの賞の性質から、評価は自然科学や伝統的な学術分野に偏っています。

教育面に関しては、前述の通り、ノーベル賞やフィールズ賞を受賞した卒業生の数で測っています。つまり、大学での教育の質に直接的に関連した指標となっていません。評価指標全体に対する教育の割合も10%と他のランキングと比べて低いウェイトとなっており、教育力よりも研究力を重視したランキングになっています。

◆まとめ

主要な世界大学ランキング、THE、QS、ARWUの3つに焦点を当て、その評価方法について掘り下げました。これら3つのランキングは、高等教育の世界のみならず、世間一般で広く認知されており、進学先の検討において重要な参考情報として位置づけられています。しかし同時に、その評価方法や基準に対しては専門家を中心に多くの批判が提起されているのも事実です。

これらのランキングはいずれも研究力に重点を置いて評価をしており、特に研究志向の強い大規模大学や自然科学分野に強みを持つ大学、歴史があり知名度の高い大学が有利になる傾向があります。一方、教育力に関しては、全体的に不十分な評価を行っていると言えます。その結果、教育に重きを置く大学や学生サービスに優れる大学などは見過ごされる可能性が高いです。

また、ランキング間で評価方法に違いが見られます。例えば、QSとTHEでは評判調査が一定の割合を占めていますが、ARWUでは評判調査を用いていません。その代わり、ARWUは卒業生や教員の受賞歴などを評価指標としています。これらの違いは、ランキングごとにバイアスが生じる可能性を示しており、ランキングを解釈する際に考慮すべきポイントです。

以上の観点から、世界大学ランキングは、大学の力量を判断する重要な情報源である一方、評価方法には限界やバイアスが生じることがわかります。とりわけ学士課程の教育力を判定する材料としてはやや不適当とも言えるでしょう。こうした性質を理解した上で、適切に利用することが求められます。特に、保護者や当事者として教育力に重きを置いた大学選びを行いたい場合、研究に重きを置いたこれらランキングだけに依存せず、他の情報源も併せて参照することが重要となります。

次回、【後編】では、世界大学ランキングをめぐる動向や今後の展望についてまとめていきます。

▽新着(2023年10月11日公開)
世界大学ランキングの歩き方【後編】社会的影響と活用リテラシー

◆参考
Times Higher Education World University Rankings 2024(公式サイト
Quacquarelli Symonds QS World University Rankings(公式サイト
Academic Ranking of World Universities 2022(公式サイト

原稿:Knockout
編集・構成:原知子

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