連載 1:バイリンガルな子どもを育むための基礎知識〜世界中で使われる英語

連載 1:バイリンガルな子どもを育むための基礎知識

世界中で使われる英語

日本はその国際比較において徐々に縮小し、今の子どもたちが大人になる近い未来、国内市場から海外市場へ活路を見出そうとする必要性は益々高まると見られます。

  • 日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)は2000年の2位から下がり続けている
  • 日本の人口は減少が始まり、2060年の人口を凡そ86百万人程度になるとと推計されている  
  • 現状4人に1人の高齢者(65歳以上)の割合が、2033年に3人に1人、2060年には約2.5人に1人と推計されている

自らの人生の舵をとる幸福感を得るには、基本的には

・金銭的に満足が得られる仕事につくか、

・好きなことを仕事にするか、

のいずれかでしょう。

どちらであっても、人口が徐々に縮小する日本において、その機会は今よりも少なくなる可能性が高いならば、英語という言語は、これから80年程度を生きる世代では益々重要となるでしょう。

世界における英語のシェアをみる指標のひとつとして”Internet World Stats: Usage and Population Statistics”を例にとると、インターネット上で使用される言語の4分の一は英語です。

また、The most spoken languages worldwide in 2021においても、英語は世界で最も使われている言語です。

子どもの教育における英語の必要性を感じさせるもうひとつ注目すべきデータが、イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」の「THE世界大学ランキング」です。

これは世界の大学の順位が示されたもので、トップはオックスフォード大学。上位は英米大学が独占しています。翻って日本の東京大学は現時点で36位。東京大学は2013年では23位でしたが、ここ数年は30-40位台を前後しています。

今後、高校や大学の段階では、日本の大学ではなく海外の大学を考える子ども(そして親)が徐々に増加することが考えられます。そしてその場合、殆どの子どもと親が直面する課題は英語力不足ではないでしょうか。そして英語力を育む上で最も重要なタイミングは、子ども期なのです。

自動翻訳によって英語は不要になる?

自動翻訳の近年の進化には目を見張るものがあります。インターネット上の無料の翻訳サービスは、以前は殆ど使い物にならなりませんでしたが、近年の進化には目を見張るものがあります。

例えばGoogle翻訳は2016年以降のアップデートで年を追って大幅に改善し、使えるレベルになってきました。

自動翻訳では技術の進化により、今後英語力は必要なくなるのでしょうか。

この議論は長くなるし、現時点で答えを出すには尚早です。

しかしコミュニケーションを、同期型(リアルタイムのもの)と非同期型(リアルタイムでないもの)に分けて考えることはヒントになるでしょう。

言語習得の4技能のうち、同期型(リアルタイム型)は「聞く・話す」であり、非同期型(非リアルタイム型)は「読む・書く」です。

eメールに代表される非リアルタイム型コミュニケーションは、リアルタイムで即時の回答反応を求められないので、自動翻訳によってかなり相当程度、代替できる可能性があります。

一方で対面で話したり聞いたりするような、リアルタイムミュニケーションは、即時反応が求められるほかこと、表情やボディランゲージなど非言語コミュニケーションも含めて行うことが多いですね。

Face-to-faceの現場において一人だけ自動翻訳機を使用することに違和感は生じないのか、またビジネス上の成功のみならず、異国の人との信頼関係や友情が、自動翻訳機を解して成立するのかは、疑問が残るところです。

何よりすでに世界中の多くの人は、英語を学び英語を話すことができます。

リアルタイム型で英語を使用する場面においては、友情や信頼関係といったものの基礎になることを考えると、機械を介してではなく、自分自身の声と言葉で話すことの重要性は、簡単には減じないでしょう。

さらに、グローバリゼーションで人の移動はますます盛んになり、移動するのは生身の人間なので「意図を伝える」以上の目的が生まれます。

たとえば国際結婚の増加は人の移動が盛んになる世界の中で現れるひとつの現象で、両親の母語が異なる子どもは複数の言語環境で育ちます。

Brexitに代表されるように各地で、「人の自由な移動」に反動が来ているものの、また新型コロナという、移動を遮断する事象が起きているものの、今後、よりつながった世界で大幅に人の移動が減るとはとても思えません。

言語に「意図を伝える」以上の目的、たとえば文化を理解するため、自分のルーツであるなど、がある場合には、自動翻訳機で代替できないものです。

以上より、AIによる言語学習不要論が出ることは理解するものの、AI翻訳では代替しずらい場面は数多く考えられます。

そんな現在と未来を生きる日本の子どもたちと日本にとって、数%でも良いので、複数の文化と言語をバックグラウンドとするバイリンガル・マルチリンガルが生まれてほしい、と思っています。

ムサシインター 宇野令一郎
慶應大学卒業後、東京銀行に勤務。その後、カナダMcGill大学経営大学院MBAを取得。帰国後、大学設置事務局長を務める。東京のケンブリッジ国際認定校及び国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールを経営。熊本大学大学院の教授システム学の講師も務める。
- Advertisement -spot_img

関連記事