ホーム小学校国際教育10歳からのロジカルシンキング⑥ 読解力を伸ばすには

10歳からのロジカルシンキング⑥
読解力を伸ばすには

本コラムは、小中高生を対象に、ロジカルシンキングを身につけるための講座を開講する学習塾ロジムの塾長・苅野 進 氏による連載コラムです。子どもたちが世界のどこでも、誰とでも共に生きていくためにはどんな力が必要なのでしょうか。eduJUMP!編集部では、言語能力や探究する力と並んで、問題ごとを解きほぐし、自らの立場を明らかにし発信できるスキルとして、あたらめて「ロジカルシンキング」に注目しています。(※第6回より連載タイトルを変更しました)


苅野 進 氏
東京大学卒業後、大手人事・経営コンサルティング会社で社会人向けのロジカルシンキング研修、指導を担当。その中で、英語教育などと同様小さい頃から考え方の基礎に親しむ必要性を痛感し、2004年にロジムを設立。主な著書に「10歳でもわかる問題解決の授業」(フォレスト出版)、「ロジカルキッズワーク」(学研プラス)がある。


【連載】10歳からのロジカルシンキング⑥ 読解力を伸ばすには

読解力は「よく読みなさい!」では伸びません

しばしば「家庭でのロジカルシンキング・考える力」の伸ばし方についてご相談を受けます。しかし、ロジカルシンキングとか論理的思考、考える力、と言うと、とても範囲が広くなりますね。

・諦めずに粘り強く考え抜く
・理由を考える
・選択肢を漏れなく数えあげよう

などが挙げられるでしょう。

今回は、その中からロジカルシンキングを身に付けるために重要な力である「読解力」の伸ばし方について取り上げてみたいと思います。

「読解力」は、国語の問題を解く力のことだけではありません。説明を正しく理解したり、与えられた条件を過不足なく読み取る力も含みます。

多くの小学生を悩ませる「算数の応用問題」を例にとってみましょう。

「応用問題は苦手」という声をよく聞きますが、「応用問題」とは一体「基本問題」と何が違うのでしょうか?「ひねっている」とか「複雑」とか表現されることが多いのですが、とても抽象的ですね。

実は、基礎問題と応用問題の違いは、解答を導くために『必要な条件』を読み取るまでに設けられているハードル(1段階、場合によっては2段階以上)があるか、ないかであり、それを読み取る力が読解力なのです。

例えば、

底辺が6cm、高さが5cmの三角形の面積は?

という問題は、基本問題だと言えます。

< 三角形の面積=底辺×高さ÷2 >

という公式を使うために必要な「底辺」と「高さ」がそのまま提示されているからです。つまり、必要な条件の読解が容易なのです。

一方、応用問題は、「三角形の面積は?」と問われているのにも関わらず、問題文の中に「底辺」「高さ」という単語が見当たらないような表現になっています。しかし、面積を求めるには、「底辺」と「高さ」は必ず必要な条件なので、直接「底辺は〜」「高さは〜」と表されていなくとも、なんらかの形で与えられています。その情報を読み取る力が読解力であり、応用問題には必要となります。

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応用問題が苦手というお子さんは、

りんご1つ300円です。3つでいくらですか?

という問いなら、「300×3=900円」とできるのに、

りんご1つは、みかん1つより30円高いです。みかんは40円です。
りんご3つでいくらですか?

となると、「りんご1つの値段×3つ=りんご3つの値段」の式にあてはめようとするため、「りんご1つの値段が書いてない!」となって思考が止まってしまうのです。

これは簡単な例ではありますが、必要な条件(りんご1つの値段)の読み取りのためにハードルが1段階設定されているということがどういうことが、お分かりいただけたかと思います。

親ができる的確なアドバイス

上記の例で、「りんご1つの値段が書いてない!」と、思考が止まってしまう子に

「よく考えて!」「よく読んで!」

と声をかけてもあまり効果がありません。子どもは具体的に何をすれば良いかわからないからです。

ご家庭での声がけポイントは、

「問題文に書いていない数、情報を作り出してみよう!」

です。

この声がけによって、『40円と30円を使って、新しい数や情報を作り出す』という具体的なステップへと進むことができるのです。

ここでの注意点として、「そんなの意味ないよ!」と作業を遮ってしまわないことです。

答えを知っている立場からすると「そんな数使わない!」「そんな情報意味がない!」という作業をしてしまうことも多いでしょう。しかし、応用問題を解くには、必要な情報だけをスマートに作り出すというよりも、使える可能性のある情報を数多く作り出して、試していくスピードの方が物を言うことが多いのです。

「りんごの方が高い!」(当たり前・・・)
「みかん2つで80円」(そっちじゃない!)

などでも、練習としては十分役に立ちますので是非誉めてあげてください。

条件を正しく、十分に読解を

ロジムの教室では、

この問題文から作れる数、言える情報を5つ作ろう

というワークを取り入れています。

応用問題を解くための「読解力」を高めることのみにフォーカスしています。小学生だと、一読しただけでなんとなく全ての情報がインプットされた気になってしまい、問題文を再読したり、その情報を吟味したり変形したりする作業を怠りがちなので、「読み取る」ことだけを目的にしたワークを用意しているのです。

この姿勢は、「与えられた条件を正しく、そして十分に読解できているか?」を常に自分に問うものであり、試験問題だけでなく、コミュニケーションの中でも「読解力」の最も重要な最初の一歩です。

「よく」「しっかり」などという指示は子供の世界でも、大人の世界でもトラブルの原因になる非常に曖昧な表現です。

是非、今回のコラムを参考に、明確なアドバイスでお子さまのスムーズなステップアップを実現していただきたいと思います。

これまでの【連載】ロジカルシンキングのススメはこちから
連載1 なぜ「好き」を続けるためのロジカルシンキングが重要なのか? 
連載2 日本一の頭脳:東大総長が対象を与えた与えたオンラインの学びとは?
連載3 「日本語の力を高める」ための英語教育
連載4 日本と海外の教育はなぜ違うのか
連載5 ロジムの教室から

※連載6より連載タイトル、体裁が変更になりました(編集部)

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