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【セミナーレポート】世界2大カリキュラムー国際バカロレアカリキュラムとは

金融庁・トライコー主催!国内インター・ボーディングスクールの最新事情
– 話題の国際教育イベントの当日レポートを公開!

11/10(木)と11/17(木)、『国内インター・ボーディングスクールオンラインセミナー』(主催:金融庁、トライコー)が開催されました。当日は、日本への駐在を検討している海外の投資家や国際教育に興味がある国内外の家庭を中心に約570名(2日間合計)が参加。日本のインターナショナルスクールやボーディングスクールの魅力や最新事情に、熱心に耳を傾けていました。
編集部では、同セミナーの模様を登壇者のお話で3回に渡ってお届けします。
第1弾は、アオバジャパンインターナショナルスクール光が丘キャンパスの校長、ポール・フラデール氏による、「国際バカロレアカリキュラムとは」に関するプレゼンテーションです。


imageポール・フラデール 氏
アオバジャパンインターナショナルスクール光が丘キャンパス校長。
31年間教育者として、ハワイの州立学校と日本の私立学校に勤務。現在は、700人以上の生徒が通う国際バカロレア認定校のアオバジャパンインターナショナルスクールの光が丘キャンパスの校長を務める。国際基督教大学大学院に在籍中で、ブレンド型学習(blended learning)*についての査読付き論文を複数発表するほか、2021年にRoutledge社と書籍を発刊。現在は、博士論文を執筆中。20年以上日本に暮らしており、永住権も保有。余暇には、同じくアメリカ人の妻とともに、日本の田舎にある築132年の古民家での暮らしを楽しみ、その様子はCNNでも取り上げられ話題に。*学校での対面学習とオンライン学習を組み合わせた学習方法のこと


責任ある行動のための「態度」と「技能」を身につける

-国際バカロレアカリキュラムとは

国際バカロレア機構(International Baccalaureate Organization、本部:スイス・ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムが「国際バカロレアカリキュラム」です。

国際バカロレア(以下、IB)は、世界の複雑さを理解し、それに対処できる生徒を育成し、将来に向けて責任ある行動をとるための態度と技能を身につけさせるための包括的な教育プログラムとして、1968年に設立されました。

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IBが日本に上陸して数十年間は、主にDP(高校生プログラム)が中心でしたが、次第にPYP(小学生プログラム)やMYP(中学生プログラム)にも枝分かれしました。

IBは本来、世界中を仕事で移動する外交官や民間企業の海外駐在員からのニーズに応えて設計されました。世界がより密接に繫がり、彼らがスイスを離れて他国に滞在する時間が長くなるにつれて、赴任先の現地教育に馴染めない子女達に対して、十分な教育機会が無いことに気が付いたのです。

やがて、IBが提供するものに大きな価値があることを地域社会が認識し始めた為、IBの使命はより幅広い層の人々に奉仕するものへと変化していきました。

それは、教育に対する全体論的なアプローチです。各教科のバランスがとれていること、子どもたちが主体性を持って学習に取り組めるような探究型であることが特徴です。

IB校であるためには、一定の資格と定期的な再認定を受けなければならず、子どもたちが国から国へ、学校から学校へと移動しても同様の経験ができるように、一貫性が保たれています。どこにいても一定の教育水準を担保しているという点で、IBの優秀さは知られています。

IB校の卒業生は、世界中の平均的な高校の卒業生よりも世界のトップ大学への合格率が高くなっています。IBの卒業生が大学1年生になった時、「高校の最終学年は大学の1年生より大変だった」というのが典型的な感想です。

世界中の主要な大学は、IBを入学資格として認めています。そして、多くの場合、子どもたちが一定の成績を収めれば、履修した科目を大学の単位として取得することもできます。

日本の文科省もIB推し!多言語で多方面の学習と探究が魅力

-年齢ごとに4つのプログラムに分かれている

-PYP (Primary Years Programme)
PYPは3歳児から12歳児を対象にしたプログラムです。言語・社会・算数・芸術・理科・体育の6教科を学び、精神的、身体的、感情的な発達を促します。

日本のカリキュラムと大きく異なるのは「私たちは何者なのか」「私たちはどのような場所・時代にいるのか」「どうやって自己表現するのか」「世界はどう動いているのか」「私たちはどう組織しているのか」「地球の共有」という、Units of Inquiry(UOI、探求の単元)と呼ばれる6つの科目横断テーマが並行して存在することです。

これらは各科目の内容を習得するだけでなく、それらを学際的に応用・統合して社会に出てから必要とされる、自分で考える力やアウトプット力をつけることを目的としています。

これにより、子どもたちは学習内容を結びつけて、事実や数字に優先する概念的な理解を得ることができます。そのため、アプローチにある程度の柔軟性があります。つまり、内容主導型ではなく、コンセプト主導なので、どの言語でも提供することが可能なのです。

-MYP (Middle Years Programme)
MYPは11歳から16歳までが対象のプログラムです。概念的な学習を通して社会を結びつけます。一般的なトピックや教科は、数学、科学、英語、そして芸術や体育などです。また、MYPもどの言語でも提供が可能です。

このプログラムの特徴は、コンセプト思考を深く掘り下げていることです。初年度は、展覧会というもので終わります。これは1年間のプログラムで、前半は準備期間です。そして後半は、子どもたちが学んだことを総合して、親御さんや地域の人たちに向けて大きなイベントを作り、そこで学んだことを共有します。

MYPに進むと、コミュニティプロジェクトかパーソナルプロジェクトのどちらかでプログラムが終了します。これらのプロジェクトは、通常、子どもたちが自分の時間を使って行うものです。このプロジェクトは、その名の通り、生徒自身が行うもので、DPで学習する学術的文章を書くためのアカデミックライティングに備えるために行われます。

また、情熱や興味のある分野を追求することで、自分自身の学びをさらに深めていくための準備にもなります。

-DP (Diploma Programme)
DPは16歳から19歳を対象にしたプログラムです。大学1年生の授業によく似ており、一つの科目の中に専門科目がたくさんあります。

例えば、理系に興味があれば、科学の分類にある物理、生物、化学の3科目すべてを履修することができます。さらに、これらの科目はSL(標準レベル)とHL(ハイレベル)の2種類に分けられます。これらのレベルの違いは、概念的な探求の高度さとトピックの広さによって特徴付けられます。

外部試験を受けることでDPは修了となります。いくつ受けるかは、卒業証書をすべて取得したいのか、それとも特定の科目を修了するだけで良いのかによって異なります。

フルディプロマ取得を目指す場合は、CAS(Community Action Service)セクションやセグメントを修了しなければなりません。そして、その中に小論文(エクステンドエッセイ)と呼ばれるものがあります。この3つの要素は、他の教科の勉強に加えて行われるのです。

この一連の学習の中で、子どもたちは自分が興味のあるテーマを追求します。プロジェクトやリサーチペーパー、そしてオリジナルのパフォーマンス作品であったりしますが、必ず書くという要素が含まれます。

その点数と、テストや内部評価で得た点数を足して、最終的な点数とします。この点数は、子どもたちが大学に出願する際に、奨学金や、特に優秀な生徒の場合、大学の上級コースの単位を取得したり、上級コースに進むことができるようにするために使われます。

現在、DPは英語、フランス語、スペイン語のいずれかで提供されています。しかし、時間の経過とともに、DPが提供される言語が増加しています。日本の文部科学省はIBを日本全国に普及させることに熱心で、5年以内に200校を目標に掲げており、現在それを達成したところか、達成間近のところです。

-IBCP (Career-related Programme)
最後に、IBCPがあります。これは一番最近できたプログラムで、キャリア関連のプログラムです。キャリアと職業に関する教育です。これは、高校を卒業した後、必ずしも直接大学に入ることを希望していない、より直接的なキャリアパスを探している生徒のニーズに対応するためのものです。このコースは、英語、フランス語、スペイン語で提供されています。

多くの科目を通して、主体的に学び、深く考える力を養える

-IBを選択した際の優位性

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①多くの科目を学ぶことができる
IBの科目選択は、母国語、第二言語、社会、科学、数学、芸術の6つのグループからそれぞれ1つずつ、6科目にわたって学びます。また、これらのグループには様々な科目が用意されており、高校では通常学べないような分野も学ぶことができます。
②主体的に学び、深く考える力を養うことができる

国際的に活躍できる人材の育成を目指すIBでは、教育目標として「探究者」「思考者」など10の学習者像を掲げています。これは教育内容にも反映されており、授業ではグループワークによる実践的な学習でアクティブラーニングを、課題としてエッセイやプレゼンテーションを多く取り入れ、調べたことをまとめ、自分の意見をまとめることを求めています。

 

改めてIBを選択する場合の学習の流れをおさらいします。

初等教育のPYPでは、クラス担任の講師がほとんどの教科を担当し、外部の専門講師は日本語やその他の言語、美術、体育などを担当します。

初等教育レベルでは、子どもたちが主体となって学習に取り組むのはまだ難しい発達段階です。そのため、教職員による強力なサポートと足場作りを行ってから、子どもたちが徐々に解放されるようなアプローチで、子どもたちが自分の学習に対してより多くの責任を持てるようにします。

中等教育のMYPでは、PYPより多くの教師がおり、子どもたちは部屋から部屋へ移動し、異なる生徒、異なる教師と科目を勉強します。欧米でよく見られる、専門講師が教える移動教室型の学習プログラムです。

中学生になれば、かなり自己管理ができるようになることが期待されます。しかし、中にはIBプログラムに初めて参加する生徒もいるので、そのような生徒には、基本的に必要なスキルを身につけるための移行期間が設けられています。

そして、高等教育のDPは、非常に個々の教師による専門的な科目や学習です。他の高等教育と同じように、生徒が自分自身を管理し、完全に自立していることが期待されています。教師は指導し、援助しますが、生徒は自分の学習を自分で計画し、実行することを期待されています。

-IBの魅力を一言で

IBカリキュラムの魅力は、強い探究心を基盤としていることです。子どもたちの情緒と認知の両方の発達に取り組む総合的なアプローチで子どもたちを育てるという点で評価を得ています。
そして、親から見て、生徒は学力だけでなく、情緒的、社会的な成長も育むことができます。私はIB校と非IB校の両方で教えた経験がありますが、世界中のIB校は純粋に幸福な学習環境であり、そこに魅力を感じています。

原稿:高橋香織(eduJUMP!編集長)、構成:原知子

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