4.国際バカロレア DPプログラムとは (Diploma Programme 高校レベル)
DPプログラムは、カリキュラムの提供が無いPYP、MYPと異なり、科目ごとのカリキュラムがIBから提供されている。これは世界共通で実施される統一最終試験の準備という側面もあるからとともに、その先にある大学入学準備も見据えているからと言えよう。
科目は、以下の6つのグループ(教科群)から1科目ずつ取得する。なおイタリック体は日本語での開講が可能とされた科目である(後述)。
グループ1:言語と文学(Studies in Language and Literature):第一言語での学習 |
科目名:言語A:文学、言語A:言語と文学、文学と演劇 |
グループ2:言語獲得(Language Acquisition):外国語としての学習 |
科目名:言語B、初級語学 |
グループ3:個人と社会(Individuals and Societies) |
科目名:ビジネス、経済、地理、歴史、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、心理学、社会・文化人類学、世界の宗教、グローバル政治 |
グループ4:科学(Sciences) |
科目名:生物、化学、物理、デザインテクノロジー、コンピューター科学、環境システム |
グループ5:数学(Mathematics) |
科目名:数学スタディーズ、数学SL、数学HL |
グループ6:芸術(The Arts) |
科目名:音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇 |
グループ1では母国語とその文化を重視するIBの考えに基づき、80以上の言語が準備されている。IBが母国のアイデンティティを失わせない教育を目指している象徴といえよう。
また国際的言語運用能力を重視する観点からグループ2がある。そして全人的教育を重視する観点から芸術が1つのグループを構成していることも大きな特徴といえよう。
上記6グループのほか、必修のコア科目として、Theory of Knowledge(TOK、知識の理論)、Extended Essay(EE,課題論文)、Creativity, Action, & Service(CAS、創造性・活動・奉仕)の3科目が配置されている。
この3つのコア科目の存在は探究型学習と全人的教育を強調するIB教育の大きな特徴といえるが、日本の科目では対比がなくわかりずらいと思われるので、内容について以下に補足する。
科目略称 | 概要 |
TOK | 生徒が過去に各学問領域の学習や自らの経験を振り返りつつ、それらから得たものを統合する過程で論理思考・クリティカルシンキングや知の本質を身に着ける学際科目。最低100時間。試験はIBOから与えられたリスト10問から選択。 |
EE | DPの6分野のうち1つに関連した研究課題について4000字(日本語では8000字)以内の論文を作成。40時間を費やすことを推奨。答えを自ら探究し生み出すDPの集大成。自ら課題を立て解決する大学の卒業論文の準備ともいえるプログラム。 |
CAS | ボランティア・コミュニティでの活動など、学問以外の活動を行う時間を課し(最低150時間)、社会性・実践性・協調性などを身に着ける。 |
なお科目の多くはHL(Higher Level、240時間)とSL(Standard Level、150時間)の2つが設置されており、6教科のうち3つまたは4つはHLを、2つまたは3つをSLで学習する必要がある。
DPの成績評価
6つの教科グループの評価については1点から7店までの7段階評価で、4点以上が合格となる。TOKとEEは合算で最大3点が与えられる(なおCASは点数には加算されないが、学校から不合格と判断された場合には、必須単位不足とみなされて、DP課程の卒業資格が与えられない)。
45点満点のうち、DPの取得基準は24以上である。各科目の成績評価は学内評価と学外評価の合算であるが、学内評価は全体の2-3割で、これをIBに提出後さらにIBにおいて評価の適正性が図られる。全体の7-8割を占める学外評価は世界で統一試験が5月と11月にあり、この採点はIBの試験官が行う。
なお後述の日本語DPで履修した場合でも、当然のことながら海外の大学でも同じように扱われる。世界統一試験という制度がある他に、何語であっても評価表(教育用語でいうルーブリック)が同一だからである。
IBDP取得率は概ね8割弱である。つまりDP準拠の授業を受けたからと言ってDP取得が約束されるわけではない。
DP未取得者は所属する高校卒業をもって大学受験資格とすることとなる。その場合、日本の一条校であれば文科省が認定する卒業資格を得るだろうし、インターナショナルスクールであれば、CIS(Council of International Schools)等の国際的な評価団体の認定をもって大学受験をすることとなる。
日本語DP
ここですでに何度か出てきた「日本語DP」について一旦整理をしておきたい。これは文部科学省とIBが2013年5月に、一部の科目を日本で行う「日本語と英語によるデュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)」の共同開発に合意したことが出発点で、現在の状況をまとめると以下のとおりである。
DPの6教科(グループ)、30科目のうち、「日本語(文学)」「歴史」「経済」「化学」「生物」「数学(StandardとHigher Level)」「物理」の7科目が日本語実施可能、及び先に述べたDPのコアであるTOK、EE、CASが日本語実施可能とするもの。
上記により、6つの教科グループから1科目を選択して履修する現在の仕組みにおいては、グループ1,3,4,5で日本語化可能科目を選べば全体の2/3は日本語となる(なお将来の進学のために日本語化が許諾されていない科目を受けたい場合は、国際バカロレアが唯一オンラインでの授業提供を許諾しているPamoja Educationが実施するオンライン授業を受ける、という選択肢もあるがこれは英語である)。
6グループのうち引き続き英語ベースなのはグループ2の外国語と6の芸術の2つのみ、さらにTOK/EE/CASのコア3科目は日本語であるから、日本語DPは、一部というより多くが日本語で履修可能なもの、と言っても過言ではない。