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「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトディレクターに聞く「好きなこと留学」の魅力②

官民協働オールジャパン体制で高校生と大学生等の留学促進に取り組む「トビタテ!留学JAPAN」。今年度から高校生への留学支援を強化した”第2ステージ”がスタートし、注目が集まっています。

2024年度派遣の募集活動が始まり、気になるのはやはり選考のこと。「トビタテ!留学JAPAN」創業時からメンバーとして参画し、現在は、プロジェクトディレクターを務める荒畦悟さんに、eduJUMP!ライター・knockoutがインタビュー。第2回は、「ズバリ聞きたい!選考のこと」をテーマにお話を伺いました。

前回のインタビューはこちらから→【第1回】好きを極める、好きでつながる 


文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクト 
トビタテ!留学JAPANプロジェクトディレクター
荒畦 悟(あらうね さとる)氏

上智大学外国語学部卒業後、人材事業会社、専門商社、外資系IT企業の3社で約13年間採用に携わり、2014年より官民協働海外留学創出プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」創業メンバーとして参画。現在はプロジェクトマネジャーを務める。


【第2回】ずばり聞きたい!選考のこと

「トビタテ!留学JAPAN」新・日本代表プログラムのチラシから一部抜粋

採用のポイントと合格者の男女比

ートビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラムへの応募にあたって、来年高校生になる子どもを持つ親の立場から気になることをお尋ねします。すばり、採用の基準やポイントはありますか。

荒畦悟さん(以下、敬称略) 情熱・好奇心・独自性は数字では測れませんので、わかりやすい基準があるわけではないのでが、言えることがあるとすれば、トビタテ!の選考は、応援したいと思わせてくれる人が受かる選考になっていると感じています。審査員に「この子を送り出したいな」「この活動を応援したいな」と思ってもらえることができるかどうかはすごく重要なポイントだと思います。優秀さを見極める選考とはちょっと違うと思います。

ー書類だけでなく、実際に面接で会ってみて話してみての印象が大きいのでしょうか。

荒畦 そうですね、できれば全員と面接したいぐらいです。しかし、面接は遠方から候補者に来てもらわなければなりませんし、面接後に不合格になる人が多すぎるのも問題ですので、書面審査はやらざるを得ない状況です。

もっとも、最近では生成AIが出てきたこともあり、書面ではわからないことも増えてきました。事前に準備したものでの選考は、今後さらに難しくなりますね。

ー一般的には、面接審査は女子が得意だと言われています。プレゼンテーションやパフォーマンスが上手な子が有利になると思ってしまいますが、そうした傾向はあるのでしょうか。

荒畦 まず、トビタテ!に限らず、留学マーケットのなかでも特に高校生は圧倒的に女子が多いです。感覚的には7~8割は女子生徒です。

理由は十分に分析できていませんが、もしかしたらコミュニケーションに長けているのかもしれないし、海外への好奇心が旺盛だったり、将来的に何か自分に付加価値をつけたいと考えたりする人が多いからなのかもしれません。

ただし、女子のほうが採用されやすいといったことはありません。おおむね応募者の属性に応じた比率で合格者が出ています。高校生、大学生ともにもそも応募者に女子が多いので、数としては女子学生のほうが多いですが、性別で合格率が違うということはありません。

留学サポートの学校間格差・地域間格差

-在籍高校から申請することもあり、留学に関しては学校ごとの熱量の差も大きいと感じます。

荒畦 学校ごとに熱量の差が生まれてしまう点に関しては、まずは先輩に経験者が1人でもいるかどうかは非常に大きいです。0と1では全然違います。

ただ、1人だけだと後が続かないんです。その子が特別に努力したんだろうとか、変わり者に思われることもあるのでしょうか、翌年から0に戻ってしまうことが多いです。その意味では、3人~4人経験者を出すことがひとつのラインだと思っています。各学年に1人ずつでもいると継続しやすいですね。

ー数年に1人だと、たまたま情報にアクセスできて挑戦した子が受かったのだろうという雰囲気になってしまうんですね。

荒畦 大前提として、本人が情報を見つけてきて応募するのが、多分1番意欲が高く理想的なかたちです。一方で、先生なり親なりが応援してくれて、学校単位でのサポートの仕組みがあると応募者が増える感覚はあります。

ただ、多忙を極める現状の教育現場の現状を考えると、学校の先生たちにトビタテ!のサポートの仕組みを整えてほしいとは到底言える状況にありません。

そこで、学校に経験者の先輩がいなかったとしても、サポートの仕組みがなかったとしても、トビタテ!の応募や留学そのものについて相談できるオンライン相談会を昨年から開催しています。そういったかたちで学校間の格差を埋めていけたらと思っています。

留学後に実施された研修の様子(「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクト)※荒畦さんご提供

-都道府県ごとの応募者や合格者にも偏りを感じます。それを解消していくための施策はありますでしょうか。

荒畦 対応策として、地域ごとの留学機運を高めるための措置を2段階で整備しているところです。

まず1つめは、「地域応援枠」です。昨年は、一つの都道府県から20人以上応募があった場合は、そのなかから5人を優先的に合格させる方式で実施しました。今回は応募者数のハードルを下げ、15人以上応募があった場合に5人を優先合格させる方式に変更しています。

合格者のロールモデルを出さないことには、その都道府県の留学者は増えないということを実感しています。その強化のために、まず「地域応援枠」を設けました。

そして2つめは、「拠点形成支援事業」です。全国に留学モデルの拠点地域をつくることを目指すことを目的としています。

この事業では、地域(都道府県)の企業や団体、学校、地方自治体等が協働して地域協議会を設立し、プログラムの設計や体制の整備、資金の確保を行います。そして、地域が確保する資金規模に応じて、トビタテ事務局から資金のマッチング支援(奨学金等および運営経費の一部)等を行います。選考や採用も地域で運営するかたちとなります。

高校生の留学は、都道府県単位での政策が重要となります。都道府県にどれだけ留学支援の仕組みを持ってもらえるかが重要だと思っています。

今年度の「拠点形成支援事業」では、滋賀静岡石川の3県が選ばれました。詳細については今後発表される予定です。ぜひ注目いただければと思います。

2024年度の拠点形成支援事業

滋賀県「未来を描け!滋賀の海外留学応援プログラム」
静岡県「ふじのくにグローバル人材育成事業」
石川県「いしかわ高校生グローバル人材育成推進事業(仮称)」

増えていく応援の輪

支援の内容についてお伺いします。コロナ禍以降、ロシアのウクライナ侵攻などもあり、円安とインフレも進んでいます。トビタテ!の選考では、採用者のうち9割が一定の世帯年収基準内の家庭から選ばれます。現状の支援金額で賄いきれるものでしょうか

荒畦 トビタテ!のためにアルバイトを追加したり、家計が負担をしていたりという声は私たちのところにも届いています。そして文科省内でも議論になっています。

支給金額を上げるべきところなのだとは思いますが、現在の支給水準でも、5,000人を送り出すための寄付額に達していません。支援企業や団体が更に集まれば、支給金額の増額も検討しています。

支援企業・団体のみなさまには、経済的な支援だけでなく、面接時の選考委員や事務局への職員出向などの人的支援、そして、会場をお借りしたり、イベントの企画運営で協働いただいたりと、様々なかたちでご支援をいただいております。

第2ステージでは再度、寄附を集めていて、ありがたいことに多くの企業・団体にご支援いただいています。これからもどんどん増やしていきたいと思っています。

最後に、これから応募を考えてる高校生や大学生にぜひ応援のコメントをお願いします。

荒畦 コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、物価高、そしてそしてパレスチナ自治区ガザでの衝突。様々なことが起き、世界が不安定になっているなかではありますが、ここで一歩踏み出すか踏み出さないかは、人生を変えることになります。ぜひチャレンジしてほしいです。

そして、まわりにいる大人<保護者・教員・メディア>は、その一歩を止めるのではなく、応援してもらえるとありがたいです

世界情勢が不安定になってきているからこそ、留学した人の価値は高まっています。相手の国や、異なる違う文化・宗教を理解できる人たちがいるのはとても重要なことです。今こういうタイミングだからこそ、世界に人を送り出すのを止めてはいけないんだろうと思っています

「自分の好きなことを大切に」「フィールドは世界で」。まずはそんなシンプルな気持ちで飛び立ってもらいたい。そう願っています。

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インタビュー・原稿:Knockout
編集・構成:原知子

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