「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」がはじまりました。6月に高校生派遣留学生が決定したのに続き、7月には大学生派遣留学生の選考結果も発表。この夏以降、それぞれの目標に向かい日本を飛び立だっていきます。今年度より“第2ステージ”がはじまったトビタテ!留学JAPAN。いったいどのような取り組みなのでしょうか。新・日本代表プログラムの特徴やこれまでの取り組みとの違い、採用者数、今後の展望を見ていきたいと思います。
INDEX
▷『トビタテ!留学JAPAN』とは
▷第2ステージは「高校生重視」
『トビタテ!留学JAPAN』とは?
「トビタテ!留学JAPAN」(以下、トビタテ!)は、文部科学省、日本学生支援機構、民間企業・団体のオールジャパン体制で2013年に旗揚げされた官民協働の留学促進キャンペーンです。主な取り組みである「日本代表プログラム」は、返還不要の奨学金など充実した支援を目玉に、日本の高校生や大学生に対して、世界各地で学ぶチャンスを提供。グローバルに活躍する人材を育成することで、日本の経済成長と社会的進歩を支えることを目的に2014年からスタートしました。
プログラムの特徴として、「自己企画型」「留学奨学金」「充実したメンターシップ」の3つが挙げられます。
自己企画型の留学
トビタテ!の日本代表プログラムの最大の特徴は、生徒や学生が自ら目標を立て、留学計画を作成する点。座学や知識の蓄積型に限らず、インターンやボランティア、個人的な研究活動なども対象にできます。好きなこと、得意なこと、挑戦してみたいことなど、興味・関心や問題意識を起点に、自由にテーマを設定し、多様な人々との異文化交流を通して課題解決能力が養うことができます。また、海外の指導者の下、STEM分野やスポーツ、芸術などの領域で技術や表現力のレベルアップを目指すこともできます。
返還不要の奨学金支援
派遣留学生に採用されると、旅費、学費、生活費など、留学にかかる費用の一部または全額が派遣先地域や家庭の収入に応じて支給されます。どのような経済状況の生徒・学生であっても応募はできますが、日本学生支援機構の第二種奨学金に掲げる家計基準を超える家庭の応募者は、採用人数の1割程度に収めると応募要件で決められています。選抜制の大型留学支援プログラムは、経済的に余裕のある家庭の子どもに有利になりがちですが、同プログラムは、幅広い層にチャンスが広がる機会として期待されています。
充実のメンターシップとネットワーキング
そして、専門家や業界リーダーからのアドバイスを受けられる様々な機会があるのも特徴です。事前・事後研修を通した自己理解の促進によって、貴重な留学機会の価値を最大化することができます。特筆すべきは、国内最大級である日本代表プログラム奨学生同窓会コミュニティ「とまりぎ」との連携があること。あらゆる分野で活躍する約9 千人もの多種多様な留学経験をもつ先輩が集まり、留学にまつわることだけでなく就職や転職など人生の節目節目でキャリア形成の支援を受けることができます。
第2ステージは「高校生重視」
同プログラムは、2014年から2022年までを第1ステージとし、7年間で大学生6,074名と高校生3,397名を派遣してきました。
国が掲げた「2020年度までに海外留学生数の倍増」という初期目標(※2013年閣議決定「日本再興戦略~JAPAN is BACK」)のうち、大学生においてほぼ達成の段階にまで至りました。しかしながら、高校生に関しては、目標達成までには遠く及びませんでした。さらには、期間中に新型コロナウイルスが発生、大学生・高校生ともに海外留学生数は大きく減少。そのため、まずは海外留学生数をコロナ禍以前のレベルに戻すことが急務となっています。
このような状況を受け、国は産学官一丸となったグローバル人材育成の強化策を発表。2023年度から2027年度までの5年間を通じて、官民協働オールジャパンで、トビタテ!の第2ステージ「新・日本代表プログラム」を実施することとなったのです。
トビタテ!第2ステージで注目すべきは、高校生への留学支援が大幅に強化された点です。これは、より若い段階での海外経験が将来の留学につながること、また、いまだ不十分な高校生向け留学支援を拡充することが地域格差を解消させ、全体の底上げとなって目標達成につながることを期待してのものです。つまり、高校段階から留学の機運を醸成し、その支援を強化するという戦略が最大の特徴なのです。
第2ステージで予定されている派遣留学生数は、5年間で大学生1,000名と高校生4,000名の計5,000名。大学生2名に対して高校生1名の採用比率だった第1ステージと比べると、高校生に重点が置かれていることがわかります。高校生の場合、生活や人間関係が学校や地域と深く結びついていることから、留学機会を創出するためには、地方自治体をはじめとした地域ぐるみの支援が欠かせません。これを具現化するために、新プログラムでは「拠点形成支援事業」が新たに始まり、各都道府県に留学生派遣のノウハウが伝えられることになりました。こうした取り組みにより、さらに多くの高校生が留学の機会を得ることが期待されています。
第2ステージ初年度である今年、大学生は募集250名に対し、採用261名。高校生は募集700名に対し、採用708名となりました。
大幅拡充となった高校生は応募者数がほぼコロナ前まで戻ってきています。一方の大学生は、募集枠が少ないのを嫌気してか、応募者数は戻りきっていませんが、募集枠そのものが少なかったため倍率が5.2倍となり、日本代表プログラムがスタートした初年度以来の高倍率となりました。
どうなる?高校生以外への留学支援
コロナ禍で落ち込んだ留学数をコロナ前の水準に回復させることを目指し、主に高校段階からの留学支援を強化する方針を示したトビタテ!第2ステージである新・日本代表プログラム。経済支援と多様な人的ネットワークを中心とした留学支援を行い、留学機会を創出することを通じて、日本の留学機運を再度盛り上げることを狙います。
新プログラムが高校生重視のスタンスをとるなかで、高校生以外の若者への留学支援はどうなっていくのでしょうか。
先日、教育未来創造会議が第2次提言「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ<J-MIRAI>」を取りまとめ、コロナ禍前に22.2万人だった日本人の海外留学生を10年後の2033年までに50万人に増やすことを目標としました。
この目標は、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも盛り込まれ、年末には予算編成もはじまる見込みです。
提言では、「1か月未満の留学者数が大きな割合を占める現状から、海外大学・大学院における日本人留学生の中長期留学者の数と割合の向上を図り、特に、大学院生の学位取得を促進する」との文言も示されています。
トビタテ!の枠組みの中に入るのか、別の施策になるのかはまだ明らかになっていませんが、大学生・大学院生の海外留学者数の目標達成に向けて、支援の拡充は期待できるのではないかと思います。
こちらも楽しみに待ちたいと思います。
◆参考◆
トビタテ!留学JAPAN公式サイト https://tobitate.mext.go.jp/
募集コースや支援内容などの詳細は上記公式サイトにてご確認ください。
原稿:knockout
写真:Pexels(特記以外)
構成・校正:原知子