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「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトディレクターに聞く「好きなこと留学」の魅力➀

官民協働オールジャパン体制で高校生と大学生等の留学促進に取り組む「トビタテ!留学JAPAN」。今年度から“第2ステージ”がスタート。コロナ禍で落ち込んだ留学生数をコロナ前の水準に早期に回復させることを目指しています。

今回、「トビタテ!留学JAPAN」創業時からメンバーとして参画し、現在は、プロジェクトディレクターを務める荒畦悟さんにインタビュー。eduJUMP!ライター・knockoutがたっぷりとお話をうかがいます。第1回のテーマは「好きを極める、好きでつながる」です。


文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクト 
トビタテ!留学JAPANプロジェクトディレクター
荒畦 悟(あらうね さとる)氏

上智大学外国語学部卒業後、人材事業会社、専門商社、外資系IT企業の3社で約13年間採用に携わり、2014年より官民協働海外留学創出プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」創業メンバーとして参画。現在はプロジェクトマネジャーを務める。


【第1回】好きを極める、好きでつながる

文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」公式サイトより

第2ステージに込められた想い

-「トビタテ!留学JAPAN」が第2ステージとなりました。10月からは2回目の募集活動がはじまっています。改めて第2ステージに込めた想いを教えてください。

荒畦悟さん(以下、敬称略) 最大のポイントは、高校生の比率が高くなったことです。2027年までに5,000人を海外に派遣することを目指しますが、そのうち4,000人は高校生となる予定です。より若い時期からの海外経験を将来のさらなる留学につなげるため、高校段階からの留学機運を醸成し、支援を強化します。

どのような背景があったのでしょう。

荒畦 第1ステージでは留学の多様化にチャレンジしました。学生自らが留学計画をつくり、支援を得て、海外で実践する。そうしたトビタテ!らしい留学のかたちは大学生コースを中心に整えられ、一定の評価を得ました。第2ステージでの挑戦は、そのトビタテ!らしい留学を高校生にも広げていくことです。

留学支援の難易度は高校生のほうが高いです。大学生であれば本人さえその気になってくれたらアルバイトでもなんでもして留学に行く道はあります。しかし、高校生の場合は、まわりの大人<保護者、教員、メディア>の意識や価値観を変えなくてはいけない。そこが高校段階の留学支援の難しさだと思っています。

高校生が留学に行きたいと意思表示をしたときに、保護者、あるいは学校の先生が少なくとも反対しないようにしたい。そのためには、文科省や支援企業が応援している姿勢を示すことで、彼らに“武器”をもたせてあげたいんです。

さらには、高校生を対象とした留学支援奨学金が圧倒的に少ない現状もあります。財政的にも彼らをバックアップしていく必要があるのです。

自分の「好き」を大切に

高校では昨年度、「総合的な探究の時間」が必修化されました。探究活動はテーマを決めるところが最も難しいとよく耳にします。自己企画型の留学を掲げるトビタテ!も留学計画のテーマを決めるところにひとつハードルがあるのではないでしょうか。

荒畦 まずテーマ選びに関しては、それが社会に役に立つ立たないには関係なく、自分が興味あるもの・好きなものを突き詰めていってほしいと思っています。

トビタテ!創業以来、私たちはずっと「トビタテ!は【好きなこと留学】である」と言い続けてきました。選考にあたっても、情熱・好奇心・独自性を非常に重視しています。

今、自分が興味持ってるものを違う国で見つめ直してみる。それは比較するのに面白い国かもしれないし、先端的な取り組みをしている国かもしれない。あるいは、日本の方が進んでいるんだったらそれを教えに行くことかもしれない。とにかく、フィールドを海外にしてみる。それだけでもいろんな気づきがあると思っています。

ー高校の先生からは、高校生がテーマを見つけるにあたって SDGs を強く意識しすぎている、社会課題をベースにした問いでなければならないと、自分たちで自分たちの可能性を狭めてしまっているのではないか、という話も聞きます。

荒畦 学校では社会探究的なテーマに取り組むことが多いのではないかと思います。もちろんそれが悪いわけではありません。しかし、基本は自分の好きなものでいいんです。

最近のトビタテ生では「ダンス」をテーマにした子が何人かいて印象的でした

ある看護系高校の生徒は、「看護」と「ダンス」を融合させたダンスセラピーをテーマにしていました。セブ島のストリートチルドレンにダンスを教え、それを通して自尊心を高める心のケアを伝えたいそうです。

また別の高専生は、「建築」×「ダンス」がテーマでした。彼は自分でもダンスをやっていて、将来、ダンスパフォーマンスをするのに最適な空間を作りたいと考えているようです。

-自分の好きなことを軸としたアイデアの掛け合わせでいろんな可能性が生まれるんですね。

荒畦 その時におすすめしたいのが「留学大図鑑」です。

文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」公式サイト内『留学大図鑑』トップページ

現在、2000人近い留学体験談が掲載されています。ここにやりたいテーマや自分の好きなことを入れて検索すると、先輩の留学計画を見つけることができる。それらを眺めるだけでも発想が膨らみます。

留学大図鑑は、留学だけでなく、進路を考えるときや大学選びのときにも使ってもらえる教材だと感じています。自分が興味をもっていることが、どういう膨らみをもって、どこで学べるのか。もしかしたら学ぶ場は日本でなくてもいいのかもしれない。そんなことにも気づくかもしれません。

モデルとなる先輩とつながるコミュニティ

15期壮行会の様子(荒畦さんご提供)

ー今年8月、Forbes JAPAN社から「30 UNDER 30 JAPAN(日本版 世界を変える「30歳未満の30人」)が発表され、トビタテ!で海外留学経験のある若者が5人選出されていました。過去にも何人も選ばれています。どんな理由があるのでしょう

荒畦 やはり意欲が高い若者たちを採用しているという点は大きいと思います。トビタテは採用時に成績や語学力を一切考慮していません。あくまでも、情熱・好奇心・独自性を大切にしています。

そしてもうひとつは、OB・OGの存在です。

例えば、トビタテ!生には難民支援に興味がある若者が多いのですが、留学後の生活のなかでは、そのジャンルでリーダーシップをとる人物とつながるのは難しいでしょう。しかしトビタテ!には難民支援NPOの代表をやっている先輩がいます。事務局もサポートをしながら、インターンやボランティア先として紹介もできます。

そして、難民支援だけでなく、いろんなジャンルで活躍する先輩がいます。マイナーなジャンルであっても、こういう道もあるんだ、この分野を職業にしも生きていけるんだとロールモデルにすることができ、また、挑戦を応援してくれる先輩がいる--。そこはトビタテ!のコミュニティならではだと思っています。

ートビタテの同窓組織「とまりぎ」は現在会員が1万人弱。大学生等コースのOBOGだけでも6,000人規模になっていると聞きます。国内にこれほど規模の大きい留学コミュニティは他にありません。

荒畦 「とまりぎ」の特徴は規模の大きさだけではありません。きっとみなさん驚かれるくらいの数のイベントをやっています。地域ごとのつながり、同期のつながり、業界のつながりなど、“タテ・ヨコ・ナナメ”のさまざまなつながりのコミュニティで、年間200~300はイベントを実施しています。事務局も一部サポートはしますが、企画運営は基本的にはすべて「とまりぎ」のコアメンバーが担当しています。

-ここ数年、コロナ禍もあってリアルに集まることが難しかったと思います。いよいよ対面での交流ができるようになっているんですね。

荒畦 コロナ禍は本当に厳しい経験でした。留学に出してあげられなかったことも辛かったですし、リアルで会えない時期が続いたのも苦しかったです。

唯一、良かった点を挙げるとするなら、ZoomなどのWeb会議システムが発達したことでしょうか。リアルのイベントとなると、どうしても首都圏開催になってしまうので、集まれる人が限られてしまいます。オンラインであれば全国にいる人たちのみならず、海外にいる人たちともつながることができます。

しかしながら、同時に、オンラインだけだとやはり深まりきらない、つながりきれないということも感じます。オンラインでつながった後はリアルで会いたい。リアルとオンラインはミックスでないとコミュニティは深まっていかないということはコロナを経て感じてるところです。

ートビタテ!第2ステージは高校生中心となりますが、国の掲げる「2033年までに日本人学生の海外派遣50万人」を達成するためには大学生の支援も欠かせません。

荒畦 トビタテ!における大学生採用枠は減ったのですが、実は、同じく日本学生支援機構が国費で実施している海外留学支援制度・協定派遣型では、今年度からその一部が「トビタテ!型留学」の枠になっています。海外進学の給付型奨学金の募集人数も増加傾向で、来年度に向けた予算要求も増額しています。チャンスの数としては変わっていませんので、ぜひ挑戦してもらえたらと思っています。

第2回 ズバリ聞きたい!選考のこと

インタビュー・原稿:Knockout
編集・構成:原知子

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