グローバル化が進む昨今、日本人の英語力の問題が指摘されています。EF Education Firstが2023年に発表した英語能力指数のランキングでは日本は113か国中87位。アジア内では23か国中13位。英語力が諸外国の中でも相対的に低いことがわかりました。一方、国内ではDuolingoなどの語学学習アプリやビジネスマン向けの英語学習コンテンツが普及し、外国語運用能力の向上に注目が集まっています。これは子供たちも例外ではありません。今や外国語によるコミュニケーション能力は一部の業種や職種だけでなく、生涯にわたって様々な場面で必要となることが予想され、子供たちの将来の活躍の幅を広げるために不可欠な能力です。
この記事では、現在日本で取り組まれている英語学習について、2020年度に改訂された学習指導要領の内容と2023年度実施の全国学力・学習状況調査の結果(英語)から日本の英語学習の実態と課題をまとめます。さらに国外と比較した日本の英語学習の特徴や今後の展望について、英語教育に詳しい宇野令一郎さん(株式会社Aoba-BBT 常務執行役員、コンテンツ事業本部副本部長)にお話を伺いました。
2020年度改訂版学習指導要領(英語)について
子供たちが未来社会を切りひらくための資質・能力とは何かについて社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視し、2020年に学習指導要領が改訂されました。特に外国語(英語)は学習内容、指導内容が従来から大幅に改訂されたことで注目を集めています。大幅に変更された点は以下の二つです。
1 小学校5・6年生の「外国語(英語)」が新科目として設置される。
2 英語によるコミュニケーション能力の育成が重視される。
まず、従来の英語学習の課題点として指導要領では以下の点を指摘しています。
・文法・語彙などがどれだけ身についたかに重点が置かれ、外国語コミュニケーションを意識した取り組みが不足している。
・「話すこと」や「書くこと」などの言語活動が適切に行われていないこと。
・「やり取り」・「即興性」を意識した活動が十分に行われていないこと。
・読んだ内容について意見を述べ合うなど、複数の領域を統合した言語活動が十分に行われていないこと。
この点を踏まえ、次のような改善が加えられました。
・「五つの領域」で英語の目標を設定し、小中高一貫した英語教育を行う。
(五つの領域: 「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」)
・取り扱う語数の拡大 (小学校:600~700語に加え、中学校は従来の1200語程度から1600~1800語程度)
・中学校において授業は基本英語で進められる。
まとめ「とりあえず英語を使ってみる」実践的な英語力の育成を重視
従来の英語教育では文法・語彙が重視され、英語を用いたやりとりや発表活動など実践的な活動は行われてきませんでした。そこで、今回の改訂ではコミュニケーション能力の育成を重視し5つの領域で目標が設定されました。特に「話すこと(やりとり)/(発表)」では目標達成のための重要な条件として「即興で」という言葉が使用されています。
例)(4)話すこと[発表]
ア 関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興で話すことができるようにする。
(2020年度改訂版学習指導要領 p.24)
これは実際のコミュニケーションの場面を想定して設定された条件です。指導要領の中では、多少の誤りやたどたどしさがあるのは当然だという認識の下で、様々な場面において英語を使うことに子供たちが慣れていくことを重視しています。以上の学習指導要領改訂の内容から、国内の英語学習ではより実践的な英語力の向上を目指していることがわかりました。
全国学力・学習状況調査(2023年度)の結果は?
それでは、実際に以上のような取り組みが日本の子供たちに活かされていくのでしょうか。現在の日本の子供たちの英語力に関する課題を示唆するうえで、2023年度に行われた全国学力・学習状況調査の結果を参照します。
※全国学力・学習状況調査…2023年4月18日に全国の小学6年生と中学3年生を対象に実施。英語を受験したのは全国の中学生10万5,582人・9,702校。
英語では4技能(読む、聞く、書く、話す)のうち「話す」「書く」の項目の正答率が低いことがわかりました。
この結果からも、日本の子供は英語の文法・語彙に対する理解度は高い一方で、英語を使った表現活動や即自的な応答が苦手な傾向にあることがわかります。
第二弾では、現在の英語学習の課題と改善点を踏まえ、日本の英語学習の特徴および今後の展望について、英語教育に詳しいAoba-BBT常務執行役員の宇野さんにお話を伺います。