【特別インタビュー】連載vol.3
親が手本の“モデリング”子育て

主体的に行動し、社会貢献する力を
親が手本となって見せる“モデリング”子育て

非認知能力の重要性を語り、多くの著書を持つボーク重子さん。アメリカ人の夫との間に生まれた娘、スカイさんは2017年に知力、コミュニケーション力、自己表現力、特技など総合的に競い合う「全米最優秀女子高生(The Distinguished Young Women of America)」において最優秀賞に選ばれました。
母であるボーク重子さんは、一度も「勉強しなさい」と言わず、何より非認知能力を育てたことが子育ての成功だったと話しますが、今やコロンビア大学を卒業したスカイさんの子育てを今振り返り、改めて大事なポイントを伺いました。(3回目/全4回)

*連載(全4回)*
Vol.1 英語は非認知能力+認知能力で上達!
Vol.2 「やりなさい」は子どもに逆効果

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娘のおかげで自己肯定感の低かった自分が変われた

娘が通っていた幼稚園は、ボーヴォワール校という世界最高水準の名門校でした。しかし、そこでは詰め込みではなくそれぞれの子どものペースで、その子らしく学ぶことを大事にしています。「その子の自己肯定感がしっかりと育まれるように繭で包むように大切に育てていく」と園長先生が言うように、その教育はとても素晴らしかったです。

しかし、通わせると決めた時、実はアジア系のママに反対されました。「非認知能力なんて言ってないで塾に行かせた方がいい」と。日本ほどではないですが、アメリカにもドリル式などの塾もありましたし、アジア系の親は2歳くらいから通わせている家庭が多かったのです。

私自身は「なんか違うな」とは思いながらも言われるままに勉強して、高校でたら大学にいくべき、女性はキャリアより結婚相手を見つけるべき、30歳までには結婚するべき、という「女性とはこうあるべき」なレールに乗ろうとしてきました。

だけどそんな自分が嫌で、自分らしく生きている人が羨ましくても、結局、自分はどう生きたいのかもわからず、自己肯定感がとても低かったのです。認知のみにフォーカスした結果が自分の自己肯定感の低さや自信のなさだとすると、同じことをするのはどうなのかなという疑問がありました。

だから「塾に行かせないと!」と言われる度に「でもその結果が、私だ」と思いました。それでますます認知能力と非認知能力の両方を育成するボーヴォワールに通わせようと迷いが吹っ切れたように思います。

そうして私は詰め込み教育ではなく個性を大事にしてくれる教育を選びました。

そこで私の子育ては終わったと思ったのです。だって最高に素敵な幼稚園に娘が通うことになって、高校まで一貫校だから、あとは学校が娘を育ててくれると思ったのです。

ところが大間違いでした。実はそこからがスタートだったのです。そしてそこから私の人生は大きく変わっていきます。

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人は疑似体験からも学ぶことができる

非認知能力のある子どもを育てる基本中の基本は、モデリング
この理論が確立されるまで、人は実際に自分が体験したことしか学べないというのが前提でした。しかし、それが「ボボ人形の実験」で、人は疑似体験からも学ぶということがわかったのです。
ボボ人形の実験では「人は言われたから学ぶのではなく、目の前でプロセスを見せてくれる人がいるからそれをなぞって真似して学んでいく」ことを証明しています。

非認知能力の場合には、見えない人間力を育成していくからこそ、このモデリングと呼ばれるプロセスが必須になります。モデリングでプロセスを”見える化”してくれる人の存在がとても重要です。それを見て子どもは育っていきます。

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だからこそ、私がフォーカスしたのは、生き方のプロセスを見せるということです。
それは親しかできない。子どもは学校の先生を見て成長するのではなく、家の中で親を見て成長します。
学校の先生から「家でやらなければ思ったような結果は出ません。何しろ家庭の影響は学校での影響よりも大きいのですから」と言われた時は本当にびっくりしました。子育てが終わったどころか、ここからが始まりだったのですから。しかも、娘に「しなさい」とやらせるのではなく、私が自らやって見せるのです。

強い心で、変化の波を乗りこなし、どんな時も自分らしく幸せな人生を切り開く子どもを育てるためには、親である私がそんな姿を見せないといけないのです。

コミュニティに貢献できる、責任ある人に育てる

子どもにはどんな時も自分を大事にして、主体的に「やりたい」と思うことを一生懸命やって、誰かに頼るのではなく「自分でできる」と思えること、そして社会の一員として意思決定をして責任ある行動をしていく、役立つコミュニティのメンバーになってほしいと思っていました。

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そうであれば、親である私がその姿勢を見せることが最も効果的なのです。
私がビジネスを始めたのも、自分の好きなことを仕事にして、いろんなことを乗り越えて自分の人生を作っていくプロセスを見て欲しかったから。

最初から上手くいくことなんてない。行動すれば必ず壁にぶち当たります。
でもそれは「もうだめ」という失敗ではなく、成長のために与えられた問題解決の機会なのです。そして問題には必ず解決策がある。
そうして一つ一つ乗り越えていく姿を見て欲しかった。だから私は娘にとって最高に格好悪いママなのです。
だって、毎日のように「失敗」していたから。そしてそれを娘に共有してきました。「ママ、今日、こんなことしちゃったの。どうすれば解決できると思う?」が毎晩のディナーの会話だったくらいです。

失敗、そしてレジリエンスも含めて親が見せる

親が手本になるというと、「ゴールにたどり着いた成功した姿を見せるのが親の仕事」だと思いがちですが、そこだけ見せてもやり方を見せなければ子どもはできません。例えば、ボタンの掛け方ひとつにしても、ボタンを見せて「やって」と言っても子どもは分かりません。かけるところを見せてあげて、初めて挑戦するのです。
そうして見よう見まねでできるようになっていく。

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ボーグさんの新刊『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)

生き方もそれと同じです。
親がまず、自分の人生を生き、楽しい姿を見せることが大事なのです。その楽しいは、面白おかしい楽しいではなく、辛い、悲しい、難しいということがあったうえで、「問題解決の機会に溢れている」ことが重要。それが自分らしく幸せな人生を作る鍵で、それこそが素晴らしい人生なのだと思っています。

私は「子育て」の本をたくさん書いているので「子育て本の著者」と言われるのですが、照れ臭いです。というのも私にとっては「子育ての本」というよりは母親になるプロセスを書いた、いわば子どもに育てられた本だと思っているので。

面白いことにアメリカでは「子育て本」とは言いません。代わりに「Parenting」と言います。親のなり方、とでも訳せばいいのかな。(Vol.4 へ)

著者:岩辺みどり【ほかの記事を読む:過去記事

岩辺みどり
岩辺みどり
一橋大学社会学研究科地球社会専攻修士課程修了。日経系列の出版社で雑誌編集記者とし て経験を積んだ後、退社し、独立。学生時代にオーストラリア、アメリカ、イギリスなど に留学し、20カ国以上を旅する。多様性のある社会をテーマに、ビジネスからライフスタ イル、教育まで幅広く取材、執筆する。二児の母。
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