連載6: ポストコロナ時代の、デジタル活用学習のパラダイムシフト

1. 文科省「個別最適化された学び」のそもそも論

背景

一方通行の授業形態は、18-19世紀の産業革命後、学校が義務教育化される過程で広く普及しました。工業化社会の進展とともに、このone size fits all的な教育は、世界中で広く普及し、今でも多くの教育現場で実施されています。

この授業形態は以下の2つの特徴があります。

教師は標準化された単一の内容を、講義形式で提供する
全ての生徒にとって、1科目当たりの授業時間、学習の進捗スピードは同じである

この方法は、より多くの人に効率的に教育を提供し、標準的に知識をインプットした人材を大量に育成する目的には寄与しました。

しかしながら、人の得意・不得意・理解スピードの差異を無視しています。また、この手法で得意分野を伸ばしていく事も困難です。

現代は仕事の内容も多様化・複雑化しています。子どもたちが社会で活躍する未来は、Googleのおかげで大量の知識を記憶する価値も薄れ、AIのおかげで機械的な情報処理能力やルーティン業務を人間が行うことの価値も薄れていきます。

そのような中、これからを生きる人が身につけるべき力は、皆が等しく大量の知識を記憶し、平均的にスキルを修得することではないでしょう。

むしろ、一人一人の個性を活かしながら、本人が好奇心を保ち続けられる分野を伸ばすことや、クリエイティビティやソーシャルスキルといったアウトプット力を伸ばすことに教育の時間を使うことが、教育現場では大事なことだと考えます。

とはいえ学校教育においては、不得意分野であったとしても生きていく上で必要不可欠な内容は、最低限生徒に身につけてもらう必要があります。

得意分野・不得意分野に関わらず、インプットの時間を効率的にし、好きな分野を伸ばすことやアウトプット力をつけるための時間を最大化することを、具体的に教育現場で具現化するための手法として、「パーソナライズドラーニング(文部科学省的に言うならば「個別最適な学び」)」「アダプティブラーニング(適応学習)」という2つの概念を紹介します。

この2つは一般には目新しい単語かもしれません。文部科学省の「Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性」では、すぐに着手すべき課題としてアダプティブ・ラーニングの推進を指摘しています。また経済産業省が進める「未来の教室とEdTech研究会」では、「学びの自立化・個別最適化」が、「学びのSTEAM化」とともに大きく提言されています。

10年ごとに改訂される学習指導要領が本格改訂・施行する2020年以降、メディアなどでこれらを耳にすることが増えると思います。

ムサシインター 宇野令一郎
慶應大学卒業後、東京銀行に勤務。その後、カナダMcGill大学経営大学院MBAを取得。帰国後、大学設置事務局長を務める。東京のケンブリッジ国際認定校及び国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールを経営。熊本大学大学院の教授システム学の講師も務める。
- Advertisement -spot_img

関連記事