バイリンガル 子育て論④ 英語と日本語がチャンポン?バイリンガル過程で起きる危機とは?

英語と日本語がチャンポン?バイリンガル過程で起きる危機とは?

バイリンガルになる過程で起きる「セミリンガル」「コードミクシング」とは

本記事は、アオバジャパン インターナショナルスクール理事で現在、ムサシインターナショナルスクールトウキョウの理事長の宇野令一郎氏が子どもにバイリンガルになって欲しい、という保護者向けに執筆した記事です。


「バイリンガルへの道」連載は、こちらです。
① 留意すべきポイント
② メリットと手法とは
③ バイリンガル先進国カナダの事例
④ 英語と日本語がチャンポン?バイリンガル過程で起きる危機とは?は、本ページです。


セミリンガルとダブルリミテッド

バイリンガル のデメリットとして大きな問題は、母語も第二言語も中途半端になることです。
豊富な言語母国語でのコミュニケーション機会が足りない場合に生じます。

幼児期に通う園や学校で100%第二言語環境におかれ、さらに家庭において母語での充分なコミュニケーションがなされなかった場合、第二言語は伸びていきます。
しかし、母語に発達の遅れや、母語と第二言語も同年齢の母国語話者と比較して遅れることがあります。

この状況は、最終的に母語が日本語から英語に入れ替わる、またはサポートにより母語の発達が回復するため、一時的です。

注意が必要な例があります。
それが、母語と第二言語とも中途半端な状況が続く場合です。
言語は思考力を形作る根幹です。

母語と第二言語とも中途半端な場合、思考力の低下やメンタルに悪影響が出る場合があります。

母語は、人が深い思考をするときに選択する重要な言語です。

最終的に母語が英語または日本語になる可能性がある場合は、まずは基盤となる言語が損なわれないことが発達上、重要です。

母語の発達は、第二言語の習得にも好影響を与えます。

「幼児など早い年齢から英語を学ぶと日本語の習得に悪影響が出るのではないでしょうか?」と質問を受けます。

日本に住み日本のインターナショナルスクールに通う子どもは、家庭で日本語に触れる機会が多く、日本語力が極端に落ちることはありません。

家庭で熱心に英語の勉強をさせていても、心配ありません。

コード・スイッチング

バイリンガル教育のデメリットの二つ目は、英語と日本語が会話の中で混ぜこぜになるケースです。

インターナショナルスクール、バイリンガルスクールの生徒でも起きます。
家庭で英語で会話し、TVなども英語にしているなど熱心な英語教育をしている家庭であれば、幼児で多い現象です。

大人でも、帰国子女同士が日本語と英語を混ぜながら会話をするケースもあります。

英語と日本語がごちゃ混ぜな状況にどのように対応するのか。

例えば、インターナショナルスクールで英語で学び、日本人の家庭で日本語のみを使用する会話で、子どもが地球儀をさして「Japanってどこにある?」と聞くケースがあります。

このケースは、スクールで世界地図を通じて日本について“Japan”と学んでいます。

一方で家庭では“日本”という言葉を教える機会が無い場合、子どもにとっては地図で日本の形を見た場合、Japanを日本語で対応する言葉を知りません。

その場合、子どもはJapanが、英語であるのかは理解しています。

また物の呼び方について、日本語の会話内よりも英語(スクール)で覚えた単語であった場合は、英語の発音で呼ぶことがあります。

キウイを見た子どもが、日本語の「キ・ウ・イ」ではなく「キーウィー」と発音するなどがその例です。

このように英語と日本語がごちゃ混ぜの状態が、子どもの発達にマイナス影響があると考えられていました。

以前は、コード・スイッチング(Code-switching)と呼ばれ、言語習得で否定的に考えられていました。

近年、トランスファー・ランゲージ(translanguaging)論では、矯正するものではなく、二言語の発達過程で生じる肯定的な状況と考えられています。

ごちゃ混ぜは、矯正より誘導するのがポイント

大事なことは、Japanという言葉が出たときに、「Japanじゃなくて日本でしょ」と矯正しないことです。

母語も第二言語も、子どもは一つ一つ矯正されるとコミュニケーションや表現が楽しくなくなります。

言語の習得にマイナスの影響を与えます。

親は、このような場面では、「日本はここだよ」と意図的に日本という言葉を使って子どもに日本語の単語に導くことです。

子どもは、日本語のときはJapanではなく、日本と言うのだと認識し、自然と単語を理解します。

大人の世界でも、外資系企業や国際的な企業のほうが、純粋な日本企業よりも圧倒的に日本語の中でカタカナが出てきます。

早期に英語を学ぶと日本語習得に悪影響を及ぼすのか?

本連載では、バイリンガルになることで得られるメリットがはるかに大きく、一定期間英語に触れ続けて、ある程度のレベルに達することが必要と述べました。

バイリンガルになることで、受験や社会に出てからも様々な機会が増え、選択肢が広がります。

特に、多くの人とコミュニケーションできる言語ツールを身につけることで、豊かな人脈を築くこともできるのです。

ムサシインター 宇野令一郎
慶應大学卒業後、東京銀行に勤務。その後、カナダMcGill大学経営大学院MBAを取得。帰国後、大学設置事務局長を務める。東京のケンブリッジ国際認定校及び国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールを経営。熊本大学大学院の教授システム学の講師も務める。
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