世界の幼児教育:6歳までは、学ぶ準備期間?それとも社会性を育む期間?2つの幼児教育観

6歳までは、学ぶ準備?それとも社会性を育む?2つの幼児教育観

子育てにはさまざまな考え方があります。

遊ぶべきか、そう教育をするべきか?悩みは尽きないですね。

家庭内でも意見がわかれることもありますね。

幼児期は、のびのびとたくさん遊ばせてあげたい。
小学受験や中学受験も考えているご家庭もいるでしょう。
そのためには、子どもが幼いうちに習い事やスポーツが必要なのか。
それともたくさん遊んでもらうことが良いのか、とどれが正解なのか迷ってしまいます。

海外では、幼児期の教育についてどのように考えているのでしょうか。
ひとつのヒントが、OECD報告書にあります。

人生の始まりこそ力強く OECD報告書「Starting Strong」

経済成長や途上国支援への貢献を目的として設立された国際機関のOECD(経済協力開発機構)。

OECDと教育の関連では、3年に1度公表している、OECD加盟国の生徒の学習到達度調査(PISA)が良く知られています。TVで学力調査としてニュースとしてお聞きになった方も多いのではないでしょうか。

このOECDが世界の幼児教育・保育を調査した報告書があります。

それが「人生の始まりこそ力強く(Starting Strong)」です。

OECDは、「人生の始まりこそ力強く」を定期的に発刊しています。
これはOECDの幼児教育を調査したもので、2001年以降、数年ごとに調査報告されています。
OECDは、国の持続的な発展には「幼児期の基礎教育が重要である」と提言しています。

つまり、幼児期の教育がその後の人生に大きな影響を与え、最終的に国の成長にも影響を及ぼすと考えているからです。

私たち人は、生涯にわたってさまざまなことを学びます。
学校での授業はもちろんのこと、社会にでた後も社会性や業務に関係する資格の取得、ビジネスを成功させるのはどうすべきかなど、多くのことを学び続けます。

子育て中のお母さんの場合、わからないことや心配なことが多く、育児書やインターネットで情報を探す方も多いですよね。
「人生の始まりこそ力強く(Starting Strong)」は、お子さんの生涯学習の第一ステージと考え、“質の向上”にむけた政策を各国に重要性を説いています。

どうする?幼児期の「早期教育」

幼児期の基礎教育は、日本では「早期教育」として盛んです。
お子さんが多い地域や駅前には、受験塾だけではなく子どもの知育教室や幼児教育が並んでいます。

園長や設立者の個性が出る私立の幼稚園や幼児教室を見ると、早期から識字教育や算数教育を行うところから、逆にそのようなことは全くせず、モンテッソーリ的な、ひたすら好奇心を伸ばそうとするもの、この中間のものなど、さまざまなタイプがあります。

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世界の幼児教育でも似た話があります。そして、どのアプローチが最も優れているのかという点は、「おおむねこのあたり」というのはあるものの、一つの答えは出ていないと思います。

幼児教育の2系統

OECD報告書は、世界には2つの対照的な子ども観があると述べています。以下、便宜上、Type1と2とします。

Type 1は、子どもには学校教育の準備段階としての基礎教育を身につけさせなければならないとするもので、言語や算数等の知識獲得を目的とした学びをさせるものる。この段階の教育は、未来への投資という意味付けです。

Type 2は、子どもを一人の市民であるとみなし、その時期に幸せに生きる権利を重要視する考えであす。 この考えでは幼児期は市民として生きる最初の段階であり、子どもの幸せにつながる環境と、市民として生きるうえで大切な能力を重視します。

これを整理したのが下の図です。

幼児期のとらえ方

Type1.学習準備期間

一人の市民として人生最初の今を生きる期間

就学前教育観

将来の成功・学校準備(レディネス)・成績結果重視

今を大事に・充実(生涯教育の基礎)・経過・プロセス重視

インストラクション

知識獲得目標を提示、達成度に従い子どもを評価

子どもの遊びや能動的な活動を通じ社会性を育む

該当国群

米国・英国・ベルギー・フランス・アイルランド等

北欧諸国・ニュージーランド・オーストラリア等

 

表の「インストラクション」で示す通り、このどちらを選択するかで、教育手法が変わります。

私が関わるインターナショナルスクールは、グループによりType1、Type2の両方を運営しています。

アオバジャパンは国際バカロレアのPYP認定校として運営しており、これはどちらかというとType2です。リトルエンジェルスインターナショナルスクールの幼児部は、ケンブリッジ国際認定カリキュラムがYear1(年長)から始まることを前提に、英国のEarly Years Foundation Stageのフレームワークをベースにしています。これは、Type1です。

両方を運営している視点で見ると、たしかに結構違います。ただ、一つ誤解をして頂きたくないのは、Type1でも、お勉強ばかりすることを推奨しているわけでは全くない、子どもの能動的な遊びを全く否定していない、ということです。Eealy Yeas Foundation Stageのドキュメントを読めば、そのことはよくわかります。

つまり、国際教育的には早期教育派のType1であっても、詰め込み教育は基本ではない、ということです。Type1は、プレイベースと、アカデミックベースのブレンド型と言ってよいでしょう。

繰り返しますが、どちらが優れているかを断じることは簡単ではなく、OECD報告も、幼児教育プログラムを厳密に評価することの困難さを、あえて指摘しています。

日本ではType2の子ども観は目新しいところもあり、「子どもイコール一市民」観の台頭に世界的に影響を与えたと言われる、イタリアのレッジョ・エミリア市での取り組み(所謂「レッジョ・エミリア」)と、ニュージーランドでの国家としての幼児政策「テ・ファリキ」など、このメディアで別途紹介したいと思います。

 

ムサシインター 宇野令一郎
慶應大学卒業後、東京銀行に勤務。その後、カナダMcGill大学経営大学院MBAを取得。帰国後、大学設置事務局長を務める。東京のケンブリッジ国際認定校及び国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールを経営。熊本大学大学院の教授システム学の講師も務める。
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