幼児期の基礎教育は、日本では「早期教育」として盛んです。
お子さんが多い地域や駅前には、受験塾だけではなく子どもの知育教室や幼児教育が並んでいます。
園長や設立者の個性が出る私立の幼稚園や幼児教室を見ると、早期から識字教育や算数教育を行うところから、逆にそのようなことは全くせず、モンテッソーリ的な、ひたすら好奇心を伸ばそうとするもの、この中間のものなど、さまざまなタイプがあります。
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世界の幼児教育でも似た話があります。そして、どのアプローチが最も優れているのかという点は、「おおむねこのあたり」というのはあるものの、一つの答えは出ていないと思います。
幼児教育の2系統
OECD報告書は、世界には2つの対照的な子ども観があると述べています。以下、便宜上、Type1と2とします。
Type 1は、子どもには学校教育の準備段階としての基礎教育を身につけさせなければならないとするもので、言語や算数等の知識獲得を目的とした学びをさせるものる。この段階の教育は、未来への投資という意味付けです。
Type 2は、子どもを一人の市民であるとみなし、その時期に幸せに生きる権利を重要視する考えであす。 この考えでは幼児期は市民として生きる最初の段階であり、子どもの幸せにつながる環境と、市民として生きるうえで大切な能力を重視します。
これを整理したのが下の図です。
幼児期のとらえ方
Type1.学習準備期間
一人の市民として人生最初の今を生きる期間
就学前教育観
将来の成功・学校準備(レディネス)・成績結果重視
今を大事に・充実(生涯教育の基礎)・経過・プロセス重視
インストラクション
知識獲得目標を提示、達成度に従い子どもを評価
子どもの遊びや能動的な活動を通じ社会性を育む
該当国群
米国・英国・ベルギー・フランス・アイルランド等
北欧諸国・ニュージーランド・オーストラリア等
表の「インストラクション」で示す通り、このどちらを選択するかで、教育手法が変わります。
私が関わるインターナショナルスクールは、グループによりType1、Type2の両方を運営しています。
アオバジャパンは国際バカロレアのPYP認定校として運営しており、これはどちらかというとType2です。リトルエンジェルスインターナショナルスクールの幼児部は、ケンブリッジ国際認定カリキュラムがYear1(年長)から始まることを前提に、英国のEarly Years Foundation Stageのフレームワークをベースにしています。これは、Type1です。
両方を運営している視点で見ると、たしかに結構違います。ただ、一つ誤解をして頂きたくないのは、Type1でも、お勉強ばかりすることを推奨しているわけでは全くない、子どもの能動的な遊びを全く否定していない、ということです。Eealy Yeas Foundation Stageのドキュメントを読めば、そのことはよくわかります。
つまり、国際教育的には早期教育派のType1であっても、詰め込み教育は基本ではない、ということです。Type1は、プレイベースと、アカデミックベースのブレンド型と言ってよいでしょう。
繰り返しますが、どちらが優れているかを断じることは簡単ではなく、OECD報告も、幼児教育プログラムを厳密に評価することの困難さを、あえて指摘しています。
日本ではType2の子ども観は目新しいところもあり、「子どもイコール一市民」観の台頭に世界的に影響を与えたと言われる、イタリアのレッジョ・エミリア市での取り組み(所謂「レッジョ・エミリア」)と、ニュージーランドでの国家としての幼児政策「テ・ファリキ」など、このメディアで別途紹介したいと思います。