連載4: ゼロから分かる国際バカロレア

1.はじめに

 

「教育の目標は知識の獲得ではなく、多様な考え方で発揮できる知力を育成することである」

― アレック・ピーターソン(国際バカロレア初代事務総長)

 

皆さんは「国際バカロレア(International Baccalaureate、以下略称「IB」を使用する)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 

この質問を5年前にしたとするならば、教育関係に携わっていないほぼすべての人が「知らない」と答えたのではないだろうか。最近でこそ後述の通りIBへの注目が高まりはじめたこともあり、「名前を聞いたことはある」という人も増えてきたが、その中身を具体的に理解している人はまだまだ数少ないであろう。

 

それもそのはず、日本におけるIB認定校の数は増えてきたもののまだ少なく、中心はインターナショナルスクールである。日本の一条校の高校は5000校あるが、IB校はまだ1%に満たない。

 

それでもここ数年で、国際バカロレアというキーワードをよく聞くようになってきたと思う。筆者は2018年設立の文部科学省IB教育推進コンソーシアムに、アオバジャパン・インターナショナルスクールサイドの起案・発起人として関わった。

 

現在は、事務局から離れているが、改めて、なぜIB教育が日本で必要か、本連載で紹介したい。

 

日本におけるIBの歴史を紐解くと、まず2012年6月に「グローバル人材育成推進会議」が、国際バカロレア資格校を5年以内に200校にするよう提言した。

 

これを受けて2013年、安倍内閣による日本再興戦略において、「2018年度までに国際バカロレアのDP(高校レベルにおけるIB資格)校を200校にする」という目標が改めて明記された。

 

そして文部科学省は、この意欲的な目標を達成するため、IBと協力して一部を日本語で教えることを可能とするデュアルランゲージ・ディプロマプログラム(「日本語DP」、後述)の開発を発表した。

 

このようなIBの日本における急速な関心の高まりの背景として、多くの日本企業及び日本の国力向上にとって、グローバル化及びグローバル人材の育成が今まで以上に重要になり、その中長期的手段の1つとして経済界がIBに着目したということも大きい。

 

例えば経団連は2013年6月、「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」というレポートの中でIBのDPプログラムについて、「グローバル人材を育成するうえで有効な手段の一つ」としてその普及を強く提言している。

 

このように日本においてはグローバル人材育成の観点から論じられることの多い国際バカロレアだが、誤解のないよう先に補足すると、それは国際バカロレアの授業は英語で行われるから、ということではない。

 

国際バカロレアの幼稚園・小学校課程にあたるPYPと中学校課程に相当するMYPは使用言語を問わない。そして高校過程にあたるDPは、後述する「日本語DP」の開発により、使用言語が日本語で可能な教科は増えている。

 

IB普及のポイントは、英語教育がポイントなのではなく、IBの提供する教育内容が、グローバル人材を生み出すうえで有効なプログラムであると認識され始めてきたのである。

 

ではその教育内容とはどんなものか、次項より紹介したい。

 

キーワードは「探究型学習」「全人的教育」である。

ムサシインター 宇野令一郎
慶應大学卒業後、東京銀行に勤務。その後、カナダMcGill大学経営大学院MBAを取得。帰国後、大学設置事務局長を務める。東京のケンブリッジ国際認定校及び国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールを経営。熊本大学大学院の教授システム学の講師も務める。
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