【連載】グローバルキッズの中高選び
Vol.3 3つのポリシーを見極める
著者:岩辺みどり
海外からの帰国子女、インター生、日本以外にもルーツを持つ子どもなどグローバルキッズたちの教育で悩む、1つのターニングポイントが、中学進学。
留学生や帰国生、インター生の進学サポートを長年行ってきたGLICC代表で、海外帰国生教育研究家でもある鈴木裕之さんに、そうしたグローバルキッズたちの進学選択肢について聞きました。
連載でお届けします。
GLICC代表 鈴木裕之
株式会社スタディ・エクステンション代表・大手予備校での日本語指導をはじめ、留学生や帰国子女のサポートなど、25年以上の指導経験を持つ。現在は都内の私立中学・高校の放課後学習支援に携わりながら21世紀型教育機構の事務局を務める。GLICCは、小学生から高校生まで、国際生や帰国子女への国内学校、インター校、海外学校の進学サポートや対話を生み出すクリエイティブコースなどを提供し、合格に導いている。
公式ホームページ:https://glicc.jp/
【前回まで】 Vol.1 2022年私立中学入試-国際生の動向は? Vol.2 2022年私立中学入試-国際生の動向から見えるものは?
数字や実績だけに惑わされないために
ーー国際生の学校選び。子どもに合う学校を選びたいと思っても、つい偏差値や海外大学進学実績が気になるものですよね。どこを基準に見たら良いのでしょうか?
日本での中高選びも、海外の大学進学を考える時も、きちんとチェックして欲しいのは、3つの「ポリシー」が連動しているのかということです。
その3つとは、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシー、ディプロマポリシーです。
アドミッションポリシーとは、入学に関するものです。どんな人をその学校が求めているのか、そういう人を入学させるためにどんな基準や試験を用意しているのか、という方針です。ただ「英語と算数の試験がある」とか「英語の試験が難しいらしい」という漠然としたことではなく、各学校は「こういう人が欲しいから、こういうテーマには興味を持っていてほしい」と思って問題を設定してくるのです。難易度が高いか低いかではなく、欲しい人物像と選抜方法が合っているかということも重要です。
カリキュラムポリシーとは、その学校のまさに要のカリキュラム、教育方針です。日本の中高であれば文部科学省の指導要領が基本となっていますし、海外であればA-levelやIBなど色々ありますが、ただどのプログラムかということだけではありません。
例えば、国際コースのある学校なら、「国際的」とは英語をどのように学び、どういうふうに身につけて欲しいのかということがカリキュラムに表れているはずです。英語だけでなく、日本の文化、起業家精神、海外プログラム、国際交流、そして数学や理科や他の教科も含めた上で、どのように学ぶのかということが表れているはずなのです。
総合的にできる人を育てるのか、得意を伸ばしていく教育なのか、国際人とはどういう人を仮定して教育を行おうとしているのか…。「英語が10時間ある」という表面的なことではなく、何をどのように学ぶことで、どんな力や人物を育てようとしているのか、ということが見えてくるものです。
ディプロマポリシーとは、ディプロマ=卒業資格に関する方針です。その学校がどういう人に修了証書を渡したいのかということです。それは、卒業の合格実績も含まれてきますが、ただその合格実績がイコールということではなく、多様な進路、生徒の興味に従った学部選びが推奨されているのか、有名一流校にばかり進学させたいのか、国内ばかりではなく、海外への進学にも力を入れているのか、などその幅の広さや方向性も含みます。
3つのポリシーが矛盾していないか
ーーでは、ただ「いい大学に入っているから」とか「英語の授業数が多いから」とかで決めてしまっては、その学校の姿勢を見失うことがありそうですね。
はい、特に大事なのはこの3つがきちんと連動しているのかということです。
入学、学校での学び、そして卒業、といったこの3つがきちんと関連づいていなければ、それは矛盾が生じるはずです。
せっかく高い英語力を入試で評価してくれる中学校があったとしても、それをどのように伸ばし、どのような方向に育てようとするのかというビジョンがなければ、その高い英語力は活かされずに封じられてしまうかもしれません。
それに、卒業生が難関大学や海外トップ校にばかり入っている学校だとしても、本当にあなたのお子さんが進みたいと思っている道へもサポートしてくれるでしょうか?
中高のうちに子供の興味や方向性は変わるかもしれません。そうした子どもの個性や多様性、得意を伸ばしていくようなキャリアづくりをサポートしてくれる学校選びをしたいですよね。
子どもにあった学校を見極めるポイント
もちろん国内のインターナショナルスクールに進学する人もいると思います。
海外の学校の方が、こうした3つのポリシーははっきりと出してきていますので、ただ「IBだから」と決めるのではなく、この3つのポリシーをしっかり確認して、共感できる学校を選びたいものですね。
学校選びにもちろん子どもの意見は大事ですが、子どもは、たまたま接してくれた在校生の印象や、グラウンドの広さや校舎の新しさ、といった見た目に引きずられる傾向があります。
親の役割は3つのポリシーの関連に目を向け、学校全体で理念や方針が共有されているかどうかを見極めることにあります。
そのためには、実際に学校の先生の話を聞いてみることです。「IBだから」「ブリティッシュだから」などと、プログラムだけで判断するのではなく、3つのポリシーをチェックして学校選びをしてみてください。
【連載】 Vol.1 2022年私立中学入試-国際生の動向は? Vol.2 2022年私立中学入試-国際生の動向から見えるものは?
著者:岩辺みどり
一橋大学社会学研究科地球社会専攻修士課程修了。日経系列の出版社で雑誌編集記者とし て経験を積んだ後、退社し、独立。学生時代にオーストラリア、アメリカ、イギリスなど に留学し、20カ国以上を旅する。多様性のある社会をテーマに、ビジネスからライフスタ イル、教育まで幅広く取材、執筆する。二児の母。著者のほかの記事を読む→【過去記事-岩辺みどり】