連載3 「日本語の力を高める」ための英語教育
本コラムは、小中高生を対象に、ロジカルシンキングを身につけるための講座を開講する学習塾ロジムの塾長・苅野 進 氏による連載コラムです。
子どもたちが世界のどこでも、誰とでも共に生きていくためにはどんな力が必要なのでしょうか。
eduJUMP!編集部では、言語能力や探究する力と並んで、問題ごとを解きほぐし、自らの立場を明らかにし発信できるスキルとして、あたらめて「ロジカルシンキング」に注目しています。
苅野 進 氏
東京大学卒業後、大手人事・経営コンサルティング会社で社会人向けのロジカルシンキング研修、指導を担当。その中で、英語教育などと同様小さい頃から考え方の基礎に親しむ必要性を痛感し、2004年にロジムを設立。主な著書に「10歳でもわかる問題解決の授業」(フォレスト出版)、「ロジカルキッズワーク」(学研プラス)がある。
英語教育と『日本語の壁』
「小さい頃から英語教育をすべき」と「まず日本語力が大事」の議論はお互いが直接の討論をしていないことも多く、平行線を辿るように存在し続けています。今回は、英語教育の現場での状況をお伝えします。
英語指導の現場にいると、やはり「日本語力」がネックになって英語の伸びが止まることは間違いないと思います。例えば英検3級で出題が始まる「関係代名詞」があります。
私が昨日買った本は面白かった。
この日本文を英文に直そうとするときに、元の日本文の構造を把握できない生徒は少なくありません。主語は「私が」と「本は」の2つ存在しますし、「私が昨日買った本」という、生徒に言わせれば「長すぎる主語」が難しいのです。
I bought a book yesterday was interesting.
は一番多い間違いです。ここで「ほら、やっぱり英語の早期教育は意味がない!やっぱり国語だ!」としてはいけません。このような「日本語の理解力不足」は英語の指導を受けて初めて浮き彫りになることが多いからです。もちろん、国語の授業で「文の構造」という単元は存在します。しかし、出来なくてもあまり不自由しないので問題意識は生じていないのが現状です。母国語のみで生活していると、かなり雑な文法や語法で話していてもなんとなく伝わっている気がしますし、困らないからです。
I have enough money.
I’m rich enough.
enoughは、修飾したい単語が「名詞」の場合は前、「形容詞」や「副詞」の時は後ろにつきますが、そもそも日本語において名詞と形容詞・副詞の区別をつける練習が必要な場合も少なくないのです。形容詞と副詞とは何なのかを理解するところまで戻るのです。
英語を学ぶことで浮き彫りになる日本語力
語学を真剣に学ぶと母国語の理解が進むという話はよく耳にします。英語をやるのか国語をやるのかの二者択一ではなく、「英語をやることで浮き彫りになる日本語力」という観点から、私はある程度早くから英語を学んでいくことは効果的だと考えます。従って、「日本語の構造」についてしっかりと理解している指導者であることは大前提ですし、適宜日本語レッスンに戻りながら進めていくカリキュラム管理が必要です。
現場感覚ですと、英検3級後半から準2級のところで「日本語の壁」が明確になってくる印象です。普通のカリキュラムで進んでいると中学生ですから、日本語に戻って指導してくれる先生も少ないですし、時間もありません。また、細かく見てくれる指導者に指摘してもらえないと気付けないのと、「日本語レッスン」を嫌がってしまう年頃でもあるのが、この辺りでつまずく中学生が多い原因なのではないかと思います。
文章の「論理的な構成」を学ぶのに英語の課題が役に立つことが少なくありません。
PREPの形を意識して文章構成を
意見をPREPの形で述べてみましょう。
PREPとは
・Point 言いたいこと、結論
・Reason 理由
・Example 例
・Point 言いたいこと、結論
という文章構成の型のことです。
英作文でよく出される課題ですが、英語ですと一生懸命取り組んでくれます。国語の授業ですと時間的に扱いにくいようですし、添削も嫌がられることが多いですね。
また、英検3級の作文問題ですと
「あなたが行ってみたい国とその理由を2つ書いてください」
という課題作文では、
・理由が2つ書いていない
とか
・2つの理由が同じことを言っている
とか
・2つめの理由が1つめの理由の理由を言っている
といった文章構成力の弱点が浮き彫りになるものなのです。
つまり、英語の方が言語能力の課題が浮き彫りになりやすく、指導もしやすいことが多いのです。英語学習を活用して、是非効果的に「言語能力」を高めていけるような学習を意識して頂きたいですね。
これまでのコラムはこちから 連載1 なぜ「好き」を続けるためのロジカルシンキングが重要なのか? 連載2 日本一の頭脳:東大総長が対象を与えた与えたオンラインの学びとは?
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