なぜ「好き」を続けるためのロジカルシンキングが重要なのか?
東京都内でロジカルシンキング(論理的思考力)を学べる教室「学習塾ロジム」を運営している苅野 進 塾長に連載をお願いしました。
連載1「なぜ「好き」を続けるためのロジカルシンキングが重要なのか?」
本コラムは、小中高生がロジカルシンキングを身につけるための
eduJUMP!編集部では、言語能力や探究する力と並んで、世界で問題ごとを解きほぐ
苅野 進 氏
東京大学卒業後、大手人事・経営コンサルティング会社で社会人向けのロジカルシンキング研修、指導を担当。その中で、英語教育などと同様小さい頃から考え方の基礎に親しむ必要性を痛感し、2004年にロジムを設立。
なぜロジカルシンキングが必要?という質問をよく受けます。
現在の社会において、様々な場面で求められるスキルの多くが含まれているからというのが模範解答なのですが、私は「好きなことを続けていけるための」の技術だと考えています。
多くの保護者の方が「我が子には好きなことを見つけて欲しい」とおっしゃいます。私が教育現場にいて思うことは、子どもたちは「必ず好きなことを見つけるが、続けていくスキルがない」ということなのです。
小学校1年生の時点で80%以上は「算数が好き」と感じています。しかし、壁にぶつかったときに「上手に乗り越えるスキル」がないために、どんどん「算数が苦手」「算数が嫌い」になっていくのです。
これは算数などの勉強に限ったことではありません。
スポーツでも芸術でも、子どもたちが最初に感じる「好きだ」「楽しい」という気持ちとモチベーションは、途中でぶつかる「壁」に対応するスキルがなければ失われてしまうものなのです。
壁を乗り越えるスキルには大きく2つあります。
ー上手に試行錯誤しながら進む
ー状況を上手に説明して、適切なサポートを受ける
この2つのスキルこそ、ロジカルシンキングそのものなのです。
「上手に試行錯誤しながら進む」とは
- 問題を分解する
- 試した結果を適切に比較する
- 「なぜ」の視点で仕組みを考察する
といった作業を繰り返すことです。
「状況を上手に説明して、適切なサポートを受ける」とは
- 相手が理解しやすい順序で説明する
- 相手の立場、前提条件を確認する
- 自分が必要な情報は何か?何処にあり、誰が持っているのか?を調べる
という説明·交渉のスキルに分解されるのです。
以前、私の生徒で、ある科目だけを楽しそうに学んでいる高1の生徒がいました。
その生徒の模擬試験の志望校欄にはその科目とは関係のない学部が並んでいました。
私は折に触れて、上のような話をするのですが、その生徒がある日
「好きな科目をもっと勉強したいと思っているが、親には就職しやすい学部にしろと言われる」
「自分でも、この科目を学んだ先のイメージがつかない」
と話しかけてきたのです。
この時点で「好きを続けるために、周りのサポートを求める力」が身についているなと嬉しくなりました。
このように相談する力が無ければ、彼は諦めて親の言う通り好きでもない別の学部へと進学していたことでしょう。
テスト勉強ではない、自分なりの問題設定の仕方と学び方について話をしました。
また、世の中にはその科目が必要とされる仕事はたくさんあるし、その事について喜んで教えてくれる大人もたくさんいると伝えました。
彼は、色々と検索をし始め、まずは大学の先生に会いにいき、そこの卒業生の紹介も受けるなどさらなるサポートを受けることが出来たのです。
彼はその後、その科目のオリンピックメダリストとなり、それを学べる大学へと進学し、仕事にしていきました。
外部からの「それは前例がないよ」「難しいんじゃない?」という声に対して、「大人が言ったから」「なんとなくダメな気がしてきた」と受け入れて諦めてしまうのではなく、堂々と論理的に話し合える力がなければ、子どもたちの中にせっかく生まれた「好き」はどんどん消えていってしまうことでしょう。
すぐには解けない問題にぶつかった時にも、「なぜうまくいかない?」「次はこうしてみよう」と動ければ、解決につながり、前進し続けることが出来るのです。
ロジカルシンキングによって、多くの子どもたちが「好き」を実現してほしいと願っています。
連載では、「家庭で出来るロジカルシンキング」と「ロジム教室内での様々な事例」を紹介していきます。
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