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インター生、帰国子女…… グローバルキッズの中高選び <vol.1>

グローバルキッズの中高選び <vol.1>

Photo by NeONBRAND on Unsplash

著者:岩辺みどり

 海外からの帰国子女、インター生、日本以外にもルーツを持つ子どもなどグローバルキッズたちの教育で悩む、1つのターニングポイントが、中学進学。

 留学生や帰国生、インター生の進学サポートを長年行ってきたGLICC代表で、海外帰国生教育研究家でもある鈴木裕之さんに、そうしたグローバルキッズたちの進学選択肢について聞きました。連載でお届けします。


GLICC代表 鈴木裕之

株式会社スタディ・エクステンション代表・大手予備校での日本語指導をはじめ、留学生や帰国子女のサポートなど、25年以上の指導経験を持つ。現在は都内の私立中学・高校の放課後学習支援に携わりながら21世紀型教育機構の事務局を務める。GLICCは、小学生から高校生まで、国際生や帰国子女への国内学校、インター校、海外学校の進学サポートや対話を生み出すクリエイティブコースなどを提供し、合格に導いている。
公式ホームページ:https://glicc.jp/


1回 2022年私立中学入試、国際生の動向は?>

ーーまず、国際生とはどのような生徒を指すのでしょうか?

 まず、国際生と呼ばれるようなカテゴリーが入試で使われるようになったのは比較的最近のことで、以前は海外から帰国した子どもだけが帰国子女入試の対象者でした。滞在年数にも制限があることも多く、受け入れる学校も少なかったです。

 しかし、今は新しいタイプの国際教育が注目されており、海外の滞在期間が短い帰国子女や、国内のインター生、日本以外のバックグラウンドを持つ子などを積極的に受け入れたいと考える学校が増えてきたのです。ただし、その基準は学校や年度によっても異なっているので、それぞれの学校に確認することが重要です。

ーー近年、国際教育に力を入れる学校が増え、インターナショナルコースなども広がっていると聞きます。

出典:日能研で発表されているデータを元に鈴木さん加筆修正、図表編集部作成

 国際生の中学受験では、選択肢がいろいろ分かれますよね。国内のインターナショナルスクールへの進学、日本の公立中学への進学、日本の公立中高一貫校への受験、そして、日本の私立中高一貫校への受験などです。最近では、海外のボーディングスクールを検討する方も出てきています。

 私立中高一貫校でも、やはり注目を浴びているのは、インターナショナルコースを持っている学校。代表的なのが、広尾学園三田国際ですね。インターナショナルな環境や教育でありながら、日本で認められた一条校であるという魅力があります。

 さらに、老舗的な渋谷教育学園幕張(渋幕)や渋谷教育学園渋谷(渋渋)、洗足学園などは、早くから国際教育に力を入れてきた学校ですが、ホームルームや英語以外の教科では一般受験で入学してきた生徒と同じ授業を受け、英語について取り出し授業があるタイプの学校です。これらの学校は海外大学進学のサポートなどもしていますが、国立難関を中心とした国内大学進学を想定していることが特徴です。

 こうした老舗校も人気はあるものの、すべての科目またはほとんどの科目を英語で行えるという魅力を打ち出したのが、広尾学園や三田国際です。立地も良く、共学化にしたことに加えて、ネーミングでも成功したのではないでしょうか。国際生に人気が出て、それが国内生にも派生していったという流れでした。

 さらに、工学院大学附属のインターナショナルクラス、文化学園大学杉並のダブル・ディプロマコース(DD)やかえつ有明聖学院のグローバルイノベーションクラスなども始まり、さらに新しいタイプの国際教育が広がってきています。

――では、終わったばかりの2022年では、国際生の入試はどのような傾向がありましたか?

 今年の入試は、これまでより国際生を受け入れるインターナショナルコースが増えたこともあり、幅広く受験する生徒が増えているように感じました。

 三田国際では、新しくインターナショナルサイエンスクラス(ISC)やメディカルサイエンステクノロジー(MSTC)コースが始まるということもあり、応募者が増えています。

 広尾学園や、まだ2年目の広尾学園小石川も人気でした。

 しかし、これまで広尾学園や三田国際を受験した人の次の候補となっていた文大杉並や他の国際教育を行う学校の倍率が大きく上がっています。これは、広尾学園や三田国際の競争率が上がりすぎていることもありますが、偏差値や知名度だけでなく自分に合った学校を目指すようになってきていることも言えます。富士見丘聖学院八雲学園の帰国生入試も受験者が増加しました。

国際生、帰国生、インター生などの受け入れのある関東近郊私立一覧 

国際生、帰国生の入試がある学校「東京版」出典:日能研で発表されているデータを元に鈴木さん加筆修正、図表編集部作成
国際生、帰国生の入試がある学校「神奈川、埼玉、千葉版」出典:日能研で発表されているデータを元に鈴木さん加筆修正、図表編集部作成

――今年、新たに注目すべき学校はありますか?

 この春からサレジアン国際学園(元星美学園)が共学として開校し、英語・数学・理科・社会をオールイングリッシュで行うインターナショナルクラスもできました。国際生の受験者は、英検2級以上ばかりで、準1級もいると聞いています。初年度からハイレベルな生徒が集まりそうです。

 また、2023年には、目黒星美学園が共学化し、サレジアン国際学園世田谷として生まれ変わります。こちらもインターナショナルコースの新設が予定されており、注目されるところです。

 文大杉並は、この春からダブルディプロマの準備コース、DD7を設置し、数学と理科の一部も英語になります。これまで以上に、「英語で」学ぶコースへとシフトしていきます。

 聖学院(男子校)では、中学部の英語SSコース、そして高校のグローバルイノベーションクラスが国際生にとって魅力となっています。探究・PBL型の学びを重視しており、その意味では英語ばかりを強調するコースとは少し違った国際教育を実践しています。グローバルシチズンとしての人間教育やグローバルイノベーターとしての創造力や協働力を培うことに力を入れています。

 2019年からインターナショナルコースを設けている聖ドミニコ学園(女子校)も、週14時間の英語授業時間数があり、理科と数学はネイティブ教員と日本人教員とのイマージョン授業です。

 こうした学校も国際生の選択肢に加わってきていますね。

Photo by javier trueba on Unsplash

徐々に国際生の中学進学の選択肢は増えている様子。次回は、そうした学校選びをどのように考えたらいいのか伺います。(vol.2へ続く)


著者:岩辺みどり
一橋大学社会学研究科地球社会専攻修士課程修了。日経系列の出版社で雑誌編集記者とし て経験を積んだ後、退社し、独立。学生時代にオーストラリア、アメリカ、イギリスなど に留学し、20カ国以上を旅する。多様性のある社会をテーマに、ビジネスからライフスタ イル、教育まで幅広く取材、執筆する。二児の母。

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