リーダーを生み出す世界的な私立学校のネットワーク「ラウンドスクエア」
日本の一条校でも国際的な教育はどんどん広がる
グローバルな教育は、インターナショナルスクールや留学をしなくては得られないのかというと、そんなことはありません。
まずは子どもたちの日常生活の中に、多様性や海外に触れることができる環境が重要ですよね。
いわゆる日本の一条校(日本の指導要領に沿った教育を行う日本の認可校)でも、それぞれのアプローチ方法で、生徒たちが日本の外に目を向け、世界との違いを体感したり、興味を持ったりできる機会を増やしています。
そんな日本の学校のグローバル教育も少しずつご紹介していきたいと思います。
世界50カ国200校以上が加盟の「ラウンドスクエア」
国を超えて私立学校を結ぶネットワークの代表的なものが「ラウンドスクエア(Round Square)」です。世界50カ国から約200校が加盟している大きなネットワークです。
1966年にドイツの教育者であるクルト・ハーン氏が、次世代の国際的リーダーの育成を目的として、8カ国29校による国際的私立学校連盟を設立したのが始まり。
1967年には、ハーン氏が設立したGordonstoun School(スコットランド)で第1回目の国際会議が開催され、その会議が「ラウンドスクエア」と名付けられたことから、それがネットワークの名前となりました。
ちなみにこの「ラウンドスクエア」とは、このGordonstoun schoolにある17世紀に建てられた円形の建物の名称です。環状のテーブルにみんなが座り、誰もが公平で平等である、という会議のイメージでもありますね。
加盟校はラウンドスクエアの基本理念を体現するために、国際交流や奉仕活動に取り組んでいくことが期待されています。そして、そうした活動や交流により、国際社会で活躍できる若者を育成することを目的にしています。
ラウンドスクエアの基本的な精神 「I.D.E.A.L.S.」
Internationalism 国際理解
Democracy 民主主義の精神
Environment 環境問題に対する意識
Adventure 冒険心
Leadership リーダーシップ
Service 奉仕の精神
地域会議、国際会議でグローバルな問題を議論
加盟校同士での交流は活発に行われていますが、ラウンドスクエアで重要なのは、毎年10月に開催される高校生対象の国際会議です。さらに、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア・東アジアなど地域別の会議も毎年開かれています。加盟校は、これらの会議に数人ずつ代表者を送ることになっています。
▽ 公式インスタグラムに投稿された2019年に開催された国際会議の記念写真。
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開催場所は、毎年異なる国。運営も、基本的には開催される学校の生徒や教師が主体となって、ラウンドスクエアの理念に基づきながら行われます。
国連の会議さながらに、世界中から加盟国の生徒たちが集まり、環境や国際問題などをテーマに、ディスカッションや研究発表、奉仕活動、アドベンチャーなど様々な活動を行います。
さらに4月には、中学生対象のジュニア会議も開かれています。
やりとりはもちろん、共有言語である英語。
英語が母国語でない各国の生徒たちだからこそ、英語を通して思いを通じ合わせようと努力をしあいます。そして、グループワークやディスカッションを行いながらも、互いを理解しようという気持ちもさらに生まれてくるのです。
コロナ禍では、実際に集まることはできなくなっていますが、コロナ前までは日本のラウンドスクエア加盟校も各校数人ずつの代表者を出し、国際会議に参加しています。
「ラウンドスクエア」校同士の交流
会議以外にも、加盟国の生徒たちが発展途上国を訪れて地域のための奉仕活動などを行う「サービスプロジェクト」も行われています。
さらにラウンドスクエア校同士では短期から長期の留学や、学生や教師の訪問など、加盟校同士で直接コミュニケーションを取ることもできます。例えば、ある国に研修旅行があるので、その時にちょっと現地のラウンドスクエア校に寄ってみよう、などということもあちらこちらで起きているそうです。
また、コロナ禍では国際会議に集まることができないので、オンラインでの交流も盛んに行われ、国を超えて共に社会課題について議論をしたり、互いの国についてプレゼンをしたりという機会も持たれています。
私立の中高一貫校、八雲学園は2017年4月にラウンドスクエアに加盟。国内で2番目に加入した学校となりました。
八雲学園は、ラウンドスクエアに加入したメリットをこう話します。
「様々な国の生徒と交流できるので、学校にいながらグローバルな雰囲気を味わうことができる点です。また、国際会議に参加した生徒たちが中心となってラウンドスクエア委員会がつくられ、学内でもラウンドスクエアで行われるバラザとよばれる会議を生徒たちが行うようになりました。コロナ禍の現在、メールでカナダの学校と交流をしています」
国際会議に参加した生徒が、帰国後にさらに学内でその様子を伝えて広がっています。
これまでも国際会議の参加だけでなく、アメリカやオーストラリアなどの加盟校と交換留学を行ったり、香港の学校を訪問したり、アフリカの加盟校から八雲学園に訪問があったりと、積極的な交流を続けています。
日本のラウンドスクエア加盟校
現在、日本国内でラウンドスクエアに加盟しているのは7校(2021年9月現在)。
・玉川学園(東京)
・工学院大学附属中学校・高等学校(東京)
・啓明学園(東京)
・八雲学園(東京)
・西町インターナショナルスクール(東京)
・関西国際学園(大阪)
・リンデンホール中高学部(福岡)
ちなみに加盟校になるには、ラウンドスクエアの理念にあった教育を行っているのかどうかの厳しい審査があります。日本での加盟校も年々増えてはきていますが、爆発的に増えないのは厳正な審査が行われているから。審査を終えるのに数年かかる場合もあるそうです。
だからこそ、ラウンドスクエアに加盟している学校は、それだけ積極的に国際教育に力を入れている学校とも言えるでしょう。
国内で私立校の進学を考える際には、ぜひこのキーワードも覚えておいてくださいね。
参考:ラウンドスクエア(ROUND SQUARE)
著者:岩辺みどり
一橋大学社会学研究科地球社会専攻修士課程修了。日経系列の出版社で雑誌編集記者とし て経験を積んだ後、退社し、独立。学生時代にオーストラリア、アメリカ、イギリスなど に留学し、20カ国以上を旅する。多様性のある社会をテーマに、ビジネスからライフスタ イル、教育まで幅広く取材、執筆する。二児の母。