4. 英語 – 世界中でコミュニケーションできる力
2020年からの学習指導要領では、現在5年生から開始している「外国語活動」を3年生からに前倒しし(年間35時間)、5・6年生では英語を正式教科(年間70単位時間)に格上げすることとなりました。
我々は、東南アジア・中国・韓国をはじめとするアジア各国だけでなく世界中の非英語圏において、バイリンガル教育(=母国語に加え英語をかなり重視した言語教育)が殆どの日本人の想像をはるかに超えた勢いで進んでいることを見ています。
その意味でも今回の英語学習時期の早期化と学習時間の増加は歓迎したいと思います。
しかしこの分量では、例えば小1からの英語を20年前から実施し、毎年数十万人の海外正規留学者を出している中国に、到底追いつくことは無いでしょう。日本の正規留学生は数千人で、日中の人口差は十倍だが正規留学生人口は百倍以上の差があります。
ようすれば、実践的な英語を(学校教育に加え保護者の熱意もあるが)大量に学んできたアジア各国の人達と丁々発止でコミュニケーションする基礎を築くにはまだ不足といえそうです。
また、8-9歳ごろからの学習開始は、言語修得の臨界期を越えるあたりからのスタートとなり、言語修得黄金期を逃すこととなります。
「臨界期仮説」:幼児期はどの子どもも特段の努力をすることなく言語を獲得するが、あるタイミングを越えると自然な形での獲得が困難になるとする仮説。臨界期終了後はその獲得のために異なる学習が必要。臨界期は10歳-12歳ごろとする説が多いが、発音などの音声の習得の臨界期は5-6歳ともいわれる(文法等その他は8-10歳ごろ)
我々の、41年の歴史を有するインターナショナルスクールと、10年の歴史を有するバイリンガルスクール(50%が英語)、英語サタデースクール(週1回~、3時間程度)での、英語教育歴や英語学習スタート時期の異なる数千人の児童をみている経験から、臨界期仮説は仮説というより相当程度事実であると考えます。
遅くとも5-6歳ごろの幼児期から英語に触れていったほうが、習得が早く、英語への好き嫌いが生じず、外国人への恐れがなく、異文化にオープンマインドになります。
勿論、日本人の全児童に5歳からの英語教育を実施する必要は無いかもしれません。しかし、今の子どもが大人になり日本経済に貢献する2040-2080年の間には、今現在しばしば言われる「日本人の10%くらいは英語が必要」というパーセンテージを超え、20-30%程度の人は英語を身につけていたほうが良いのでは、と推測します。
仮に自らの子どもが、仕事の現場でこの20-30%の範疇になる可能性が高いとした場合、どのような英語学習を与えることが望ましいでしょうか。日本で提供されている、幼児~小学校低学年期の英語教育の種類と課題は以下のように整理できます。
英会話教室: 近隣に教室が無ければ利用できない。週に1度程度は英語習得困難。
通信教育、DVD、CD、絵本: インプットは可能だがアウトプットが無い。
英語アプリ: 海外アプリに良いものが多数あるが、インプットは可能だがアウトプットが無い。
オンライン英会話: 幼児には画面を通じた対話は集中力の点からハードルが高い
子ども専門か、好奇心を満たす内容か、チェックする必要がある
公教育(小3~、新指導要領): 仕事で使えるレベルの人間を増やすには量が不足。
上記の多くは英語そのもの(読み・書き・聞く・話す等)を学習目的としているか、逆に親しみやすさを重視してゲームや歌を重視したものとなっている。できれば、それを超えて知的好奇心もくすぐるものが望ましいでしょう。
その学校や教材で行われている内容が、子どもの好奇心や学習本能を最大限に生かしたプログラムであるのかは、考える力をはぐくむ観点からも重要なポイントとなるでしょう。