1. STEAM – 21世紀の基礎素養
”知的欲求は人間の本性に根ざしたものだ” アリストテレス
AIが本格的に活用されるようになる近未来に、どのような教育が必要かの議論は、すでに数多く出ています。
2020年より本格施行される文部科学省の示す次期学習指導要領もその一つの結果ですし、情報社会(Society 4.0)に続く、デジタルを中心とした未来社会としてのSociety5.0とそれに向けた人材育成の議論など、様々な議論を見ることができます。
これらの議論はどこかですでに読んだことがあるでしょうから、ここでは控えます。具体的に教育現場でどのような学びを提供すべきかの実践事例は、今後出てくると思います。
本稿では、未来から逆算して21世紀を生きる日本の子どもたちが、どのような学びを経験するべきか、検討してみます。
本稿の対象とする子どもたちは、日本の義務教育を平日朝から午後まで受けている前提で、義務教育では足りないかもしれないどのような学びを家庭で補足するべきかについて、以下の3つのキーワードを絡めながら読者の皆さんと考えていきたいと思います。
-STEAM(21世紀の基礎素養)
-好奇心(あらゆる学びの着火剤)
-英語(世界中でコミュニケーションできる)
STEAM – 21世紀の基礎素養
本書の読者の中には、STEM(ステム)教育という言葉を聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。これは”Science, Technology, Engineering and Mathematics”の頭文字を使った用語で、今後一層重視すべき分野として21世紀初頭より注目されてきた概念です。
米国では、2011年のバラク・オバマ大統領による一般教書演説において、STEMが21世紀に身につけるべきスキルとして強調されました。その後、多くの資金がSTEM分野に投入され、これらの分野を通じた問題解決型学習・プロジェクトベース学習が推進されました。
一方で、STEMの強力な推進による弊害に関する議論も出てきました。例えば、有限な予算をSTEM分野に傾斜配分することで、芸術分野等、他の重要な学習分野の軽視がもたらされている、という議論です。
「理系教育のSTEMだけでは現実社会の問題解決には不足である」という議論の流れを受け、2010年前後から、STEMにA(Arts)を加えた、STEAMという言葉が提示されました。
このArtsには、狭義の芸術だけではなく、リベラルアーツ・音楽・デザイン思考・ランゲージアーツも含んで考えられることが多いです。従ってSTEAMは、単に芸術を学ぶということではなく、デザインやクリエイティブな視点を重視した概念となっています。
21世紀の問題解決やイノベーションのコアとなる要素は、今後もSTEM分野から発生することが多いと思えます。
しかし、そのコア要素を活かして起こすイノベーションは、Apple創業者のSteve Jobsの例を出すまでもなく、純粋なソフトウェアエンジニアやコーダーからというよりも、Artsの能力も持ち合わせSTEMとAの掛け合わせによる創造性を発揮したイノベーター達から生み出されるのではないでしょう。