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連載6: ポストコロナ時代の、デジタル活用学習のパラダイムシフト

3.「個別最適な学び」の元祖2 完全習得学習(Mastery Learning)

B.S.Bloomらは、Carollの学校学習モデルを発展させ、完全習得学習(Mastery Learning)を提唱しました。これは、個人の学習ペースにあわせて基礎学習を完全にマスターしてから次に進む、という考え方です。

このモデルは当時より主流であった一方通行授業の教育現場に影響を与え、成績の個人差を解決する有効な手段として知られるようになりました。

一方通行授業の節目ごとにテストを行う

テストの結果によって、結果の悪い生徒には追加指導を行う。指導モデルは以下の4種類。

再学習:同じ課題をもう一度学習
補充学習:個々の学習者が目標到達不十分な箇所のみ補充的な学習を行う
学習調整:教授・学習活動の展開のスピードを調整する
学習分岐:グループ分けし、異なる学習課題を与える

上記の1)2)は、授業中だけでなく授業後の補習や宿題として出すことになります。授業中に行う場合、不必要な生徒はより上級の学習課題をを課します。

個別化教授システム(Personalized System of Instruction “PSI”)

PSIは、1960年代にF.S.Kellerによって提唱された完全習得学習の一形態で、生まれは60年代だが、コンピューターが発展し始めた80-90年代に再興しました。生徒のドロップアウトを無くす方法として、以下の2つのユニークな特徴があります。

教師は講義を一切しない。学習者は独習教材(60年代は紙、90年代はコンピュータ)で学ぶ。
分からない部分については、教室内のProctorと呼ばれる学習補助員にいつでも質問ができる
1つの学習モジュールを終えた後、小テストを受ける。合格しなければ次のモジュールに進めない。

完全習得学習・PSIが過去に充分実現しなかった理由

このように、生徒の成績差を無くす、落ちこぼれを無くすための研究は、半世紀以上前からなされてきました。そして小テストの導入や補習など、一部では授業現場でも取り入れられてきました。

しかし本格的に導入されてこなかったのはなぜなのでしょうか。

最大の要因は、いずれのモデルであれ、一人一人の生徒への対応が必要であり、教師にとって負担が大きいものだからでしょう。

日本を例にとると、今でこそ少子化により、日本の1クラスあたりの生徒数は減少傾向にあります。しかし1クラス40名前後が普通であった以前では、これらの研究が提唱する方法は、個別の学校教員にとってはほぼ実施不可能ともいえます。

日本ではこれらを補ってきたのが、家庭教師や個別指導塾といった存在です。彼らにより個別学習の効果は実感され、現代に至るまでこの業態は成長してきました。しかしこれらは高価な選択肢であり、誰もが可能なものではありません。

然しながら、2010年代以降、人の手によらず、テクノロジーによって個別化対応を解決する手法の開発が急速に進んできました。これが、本項の冒頭にあげた、Personalized Learning / Adaptive Learningです。

半世紀以上も前から提唱されてきた、成績差を解決する理想の形が、ようやく人力ではなく低コストで提供できるようになってきたのです。

文部科学省だけでなく我々教育者自身が、「個別最適な学び」をどのように具現化するのか、腕が問われるところです。

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