7. ルーブリック・ポートフォリオ
ルーブリック:
教育関係者以外にはなじみが薄いですが、近年日本でも知られてきた手法が「ルーブリック」で、これは、学習目標の達成度を数段階のレベルに分けて記述した表です。
「知識」を得たか、「概念」を理解したかは客観テストである程度判断できます。しかし、パフォーマンスを見るスキル系(思考力など)や態度・行動は、それでは評価が困難です。そこで、予め、「要努力」「期待に達した」「期待以上」である思考・態度・行動等の評価軸を予め記述し、評価の客観性を持たせるものです。
なおこのルーブリックは事前に生徒に公開するだけでなく、主体性を持たせるために作成過程に生徒を関わらせるのも手法の一つです。ルーブリックを予め作成しておくと、教師は個々の子どもたちの普段の様子からより多くの情報を得ることができ、学びの支援も行いやすくなります。
さて、なぜここまで多岐にわたる評価方法と評価基準ツールをPYPでは提示しているのでしょうか。それは、先に上げた、
知識・概念・スキル・姿勢・行動
の5つの要素を把握する上では、客観テストだけでは測定できないからです。
例えば自然環境を学び、物を大切にすることが自然環境の維持に役立つと学んだとします。この過程で学んだ「知識」部分は一問一答テストで測定できます。
一方で知識を持つだけでは、頭で理解しただけであり、態度や行動の変化はわかりません。そこで、自然についての気持ちを課題とした作文やプレゼンテーションをさせることでで、態度の変化を確認する(パフォーマンス評価)ことも、ある程度は姿勢を把握する一つの手段となるのです。
しかし教室内や家庭において、その後も水を出しっぱなしだったり、使える紙をすぐ捨てたりしているのであれば、行動が変わっていないことになります。
そこで「姿勢」さらに「行動」までもを測定するための手段として、本人の普段の行動について、本人に予め話すことなく評価して行く「観察」が選択肢となってきます。
たとえば、水を節約することが大事だとプレゼンテーションした子どもが、本当に普段のトイレの手洗いで行動を変えているのかをチェックリスト等を使用し、観察します。なおこの方法は、評価していることを子ども本人に気づかれない、ということがポイントです。
インストラクショナルデザインの大家であるR.M.ガニエは、行動の意図を問うことを推奨しています。
「どう思うか」とたずねるのではなく、「あなたならどうしますか」と聞くのです。目の前で動物をいじめている友達がいる、おばあさんが苦しそうに倒れていた、そんな時、「どうしますか」という問いは、実際に行動を起こすのか、本音が出る可能性があります。
ポートフォリオ
最後に「ポートフォリオ」について紹介します。
ポートフォリオとは、評価の一環として、生徒が作成した作品や文章などのといった成果物や録画した、更には発表映像録画などをの、目に見える成果物をファイル(物理的なバインダーに入れる、オンライン保存、いずれの方法もある)する方法をさします。
単なる保存ではなく、教師にとっての評価、生徒本人にとっての振り返りのための保存記録行為なので、学習過程の全てを保存するわけではなく、意味があるものを子どもの目の前でファイルします。
ファイルしたときに、生徒にフィードバックを行い、達成感を持たせることで自己効力感を高め、次への達成課題も示し本人にも振り返りをさせるのです。