1. PYPとは
IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続ける(“lifelong learners”)よう働きかけています。
(IBの使命 –IB Mission Statement- より抜粋)
国際バカロレアについては、別の連載(連載3)で概要を紹介しました。ここではより詳細に、3歳から12歳の生徒に対するカリキュラムフレームワークである、IB-PYPについてもう少し焦点を当てて紹介したいと思います。
PYPの理論的背景
IBの理論的背景の一つに、ヴィゴツキーの構成主義的なアプローチがあります。少々専門的だが、構成主義において学習とは「個人が持つ過去の知識と新しい知識が結びつき、新しい意味が形成されること」、と定義されています。
このアプローチで選定される従ってPYPでとりあげる学習テーマは、学習者を取り巻く世界と本質的に結びついているものであり、現実と関連性のあるものが重視されます。
また、学習者自身が学びの主導権を握り、自主的で自発的な学習を行うことが奨励されるため、先生の役割は、一方通行で教えるティーチャーではなく、ファシリテーター、と位置づけられます。
PYPでは何をどのように学ばせたいのか
国語、算数、理科、社会、音楽、体育、道徳、、、「小学校ではどんなことを教えるのか」と尋ねられた場合、まず科目名が思いつくのではないでしょうか。または「読み・書き・そろばん」かもしれません。いずれも網羅性のある科目毎の知識体系を身につける、ということが思い浮かぶ方が多いでしょう。
しかし、以下PYPの「5つの基本要素」にあるとおり、PYPにおいて「知識」は5つの基本要素の1つに過ぎないのです。
知識: 児童に探究を通じて知ってほしい内容
概念: 教科を超えた、ものの考え方・思想
スキル: 変化する世界で児童が習得すべき能力
姿勢: 学習・環境・人間に対する価値観・姿勢
行動: 責任ある行動ができることの証明、ほかの基本要素を実践した結果
一般的にはなかなか理解が難しいPYPを紐解くために、この5つの要素を中心に見ていきます。