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UWC ISAKの精鋭たちと3時間話したら 日本の特殊性に気づかされた。

UWC ISAKの精鋭たちと3時間話したら
日本の特殊性に気づかされた。

日本のインターナショナルボーディングスクールの先駆けであるUWC ISAK(軽井沢)の学生4名にインタビューをする特別な機会を得た。彼らのうち2人は海外の学校から編入した日本人、1人は日本の全寮制中学からの編入、もう1人は幸福の国ブータンからの留学生だ。そこからのエッセンスをまとめると日本の社会の、教育の、世界標準からの解離が見えてきたのでレポートする。

寄稿:福田 崇(株)電通 クリエーティブ・ディレクター
教育ガラガラポンプロジェクト代表
カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル2015審査員


学生が集まってサッカーやると
必ず誰かが怒って帰るw

ISAKには世界各国から軽井沢に精鋭が集まり、ボーディング形式で日々学んでいる。その中で面白い話を聞いた。インタビューの日にも学生たちはサッカーを楽しんでいたが、プレーをめぐって、議論が沸騰し、怒った学生が帰ってしまったというのだ。これがもし、日本人の学生の間で起こっていたならば解決のために先生たちが出てきそうなものだが、そんな事はまったくない。当たり前なのだ。ダイバーシティが大切というけれど、本当のダイバーシティは、喧嘩別れがたびたび起こるのが日常なのだ。それぞれがそれぞれの主張をする、交わらない、そしたら帰るしかないじゃないか。そんな毎日が普通のこととして起こっている。それがISAKの一面でもある。

世界のいろんな国で違いはあって、その中での
コンセンサスの作り方はわかるけど、日本だけは特殊すぎる。
暗黙のルールが多すぎる。日本が一番変わっている。

一方で、そんな経験を日々しているISAKの日本人学生には理解できないことがある。それは日本にある暗黙のルールだ。例えば、 「先生が話しているときになぜ発言してはいけないの?」。日本の学生ならば黙って従うルールが、海外のバックボーンを持っていたり、ダイバーシティの中で学ぶ学生には疑問でしかない。かつて所属していた日本の学校で出された問題、「この歌詞を書いた作者の気持ちを書きなさい」、僕はその人ではないから本当の正解はわかるはずがないと書いたら怒られたw なぜこんなものが問題として成立しているのかがわからない。日本にいながら批判的な問いができるのがISAK生の特長だ。

日本の暗黙のルールに従っていると、
なんとなくこのままでいいのかなぁというぬるま湯につかって
時間を何年もロスしてしまう。

その結論がこれだ。ガツーンと頭を打たれたような衝撃があった。僕らが快適に過ごしている日本には、暗黙のルールがあって、みんながそこから飛び出さないように努力している、いつしか努力ではなく、それが当たり前のルールになって、飛び出すとえらく批判される。昨今のマスク警察状態になっている。それはそれで中の人は居心地がいいのかもしれないが、ダイバーシティを身に染みているISAK生はそうは考えない。このルールが自分たちの人生を遅らせてしまう可能性を指摘する。なぁなぁな居心地のいい環境で過ごすことで自分の成長が妨げられる、それをはっきりと認識している。だから大学も日本に行っちゃったら自分はやばくなる、遅れてしまうことをわかっている。

問題を見ないことにし、触れれば誰かの反発があることは触らないようにする、という日本時間、解決が永遠に来ない時間に付き合わされるのは勘弁だ、というのが彼らの主張だ。新型コロナ対策の欧米と日本の向き合い方の違いやストレスの溜め方の違いを見るようだ。欧米では議論や抗議が噴出し、その自由への主張が感染を広げてはいるが、納得感はそれなりにあるのではないだろうか?日本では感染を恐れに恐れ、暗黙のルールを勝手に作り、マスク警察、ワクチン警察などという謎の自警団が現れ、ひたすら自粛を続ける。健康に悪いのはどちらだろうか?

日本で数学やっていたやつには勝てない。

一方で、彼らにとって純粋に日本で数学を学んできた同級生は驚異だという。みんなが時間がかかる問題を計算機のように凄まじいスピードで解いていく同級生には圧倒されるそうだ。これが日本の教育の強みだが、それは本当の強みなんだろうか?

日本人はテンプレートのある問題には強いけど、
テンプレートのない問いには答えられない。

その一方で、彼らの学ぶ国際バカロレア(IB)のカリキュラムでは、答えのない問い、テンプレートのない問題が主流だ。そこで日本だけで学んできた学生は苦労するそうだ。決まった問いに答えを出すスピードが世界トップなのと、答えのない問いを深掘りする能力が世界トップなのと、どちらが社会に出てから通用するか、疑問の余地はないだろう。

日本の全寮制学校では罰で勉強をさせられるw

そんな日本で学んできた学生も今回のインタビューに同席してくれた。彼は日本の全寮制中学に通っていて、そこからISAKにやってきた。日本の中学時代にはどの部屋にはスマホを持ってきてはいけないなど、こと細かにルールが決められ、それを破ると、朝食前の時間帯に罰として勉強をさせられるとのことだった。本人はおかげで勉強ができるようになったと笑っていたが、勉強=罰という発想のもとやる勉強に何の意味があるのか?学校が勉強を罰のようなつまらないものだと白状しているようなものだ。ISAKに来た当初はみんながかつてのルール違反を平気でしていることに日々そわそわしていたそうだ。かわいそうに。

日本の礼儀は好き。スタジアムを清掃して帰るなど。

また、彼らは世界を知っているからこそ、日本の美徳もわかっている。これはよく言われていることでもあるが、日本の外で育った子どもほど、日本の良さに敏感に気づける。もちろん異常さにも。その両面を彼らは持っていて、いい部分はしっかりと認識している。W杯でスタジアムを清掃して帰るサポーター、マスターズでコースに一礼するキャディの姿など世界から称賛される姿は真実なのだ。

結論、日本人だけど、日本とは外から関わりたい。
だから、海外の大学に行って、日本に留学したい。

そんな世界を知りながら、日本で学ぶ精鋭たちに将来の話を聞いた。彼らが声を揃えて言うのは、日本にアイデンティや愛着はあるけれども、そこに外から関わりたいという声だ。日本の中にいると日本に染まり過ぎてしまう。それをリスクと考えている。だから距離を置いて関係したい。「海外の自動車会社に就職して日本と仕事をしたい」、「海外の大学に進学して日本に逆留学をしたい」、こんな発想を持ったことがあるだろうか?事実、日本の成長は先進国内で単独で停滞しており、もはや停滞国という新たなカテゴリになりそうなぐらいだ。その原因に彼らはすでに深く気づいており、この国にとどまることはリスクだと高校生にしてわかっているのだ。

僕たちはBoth Sidesを知っている。
だから、最強だ!

そして、最後彼らから聞いた究極の言葉がこれだ。「僕たちは、世界標準と特殊なケースの両方を知っている。だから、世界に生きる標準的なライバルと比べて、Both Sidesを知っているから、はるかに強いんだ。」その特殊な国の名前は、日本と言う。

取材協力:UWC ISAK Japan
生徒:Tenzin Uden, Iichiro Koizumi, Kaito Mori, Taichi Kanenobu

取材:教育ガラガラポンproject 福田 崇
写真:編集部 村田 学

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